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発酵の基礎知識

麹と糀 「こうじ」を表す2つの漢字物語

2020.12.24

<目次>

日本の食文化に欠かせない麹菌
「麹」と「糀」 の違いは?
日本を代表する「国菌」に!
広がる「こうじ」の可能性
他の食品と合体して発酵食品を生み出す「こうじ」の活躍ぶり
「こうじ」を気軽に取り入れやすい、酒粕、甘酒、塩麹に注目!
酵素は、発酵の世界の「縁の下の力持ち」!

日本の食文化に欠かせない麹菌

「発酵大国・日本」と呼ばれるほど、日本にはたくさんの発酵食品が存在します。発酵には酵母菌や納豆菌などの微生物が必要となりますが、日本でつくられる多くの発酵食品に「麹菌」が使われています。
「麹菌」とは、加熱した穀物などに繁殖するカビの一種。この「麹菌」を、米・麦・豆などの蒸した穀物に付着させ、発酵に適した温度や湿度などの条件下で培養したものを「こうじ(米こうじ、麦こうじ、豆こうじ、など)」と呼びます。味噌、しょうゆ、みりん、米酢など、和食の味を決める発酵調味料には「麹菌」が使用されています。
「麹菌」は、日本の食文化を支える重要な菌といってもよいでしょう。

「麹」と「糀」 の違いは?

「こうじ」を表す漢字には「麹」と「糀」の2種類があることをご存じでしょうか?

その違いは原材料にあります。
「麹」は中国から伝わった漢字で、現在では米・麦・豆などからつくられる「こうじ」全般を表しています。
それに対して「糀」は、明治時代にできた和製漢字。米からできる「米こうじ」のみを表しています。蒸し米の表面をふわふわの白い菌糸が覆っている様子がまるで花のようであることから、このような漢字がつくられたといわれています。
米こうじができる様子を「米に花」と表現するあたりに、日本ならではの美意識を感じます。また、わざわざ専用の漢字をつくりだしたということからも、いかに「米こうじ」が身近で大切な存在だったかをうかがい知ることができるのではないでしょうか。

日本を代表する「国菌」に!

「こうじ」は古くは奈良時代の書物に登場し、平安〜室町時代には「こうじ」を専門に売る「麹屋」や「麹売り」などが存在したとか。このように古くから、日本人は「こうじ」を利用してたくさんの発酵食品をつくり出してきました。
そして2006年には、多くの伝統的な発酵食品に使用され、豊かな食文化の醸成に大きな貢献をしていることから、日本醸造学会が「麹菌」を「国菌」に認定。まさに日本を代表する菌となりました。

広がる「こうじ」の可能性

また、「こうじ」といえば近年ブームとなった「塩こうじ」が頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
「塩こうじ」は「米こうじ」に塩と水を合わせて糖化させた万能調味料。漬ける、あえる、かける、と幅広く使え、食材のうまみを引き出し、しっとりさせるなどの効果が話題となりました。
これらの効果は、「こうじ」に含まれる酵素の働きによるもの。さらに、消化促進や代謝アップが期待できる作用もあることから、美容や健康にもうれしい食品として注目されるようになりました。

先人たちの感覚と経験によって、育まれてきた「こうじ」。時代が進み、その有用性も科学的に解明され、ますます用途の広がりが期待されます。

他の食品と合体して発酵食品を生み出す「こうじ」の活躍ぶり

前述した通り、「こうじ」とは、蒸した米や麦、大豆などの穀物に麹菌を付着させ、繁殖させた、いわば発酵の「タネ」のようなものです。
「こうじ」の作り方を、「米こうじ」を例に挙げて大まかに解説すると、「蒸し米(穀物)+麹菌=米こうじ」といった具合です。

そして次のステップとして、この「こうじ」を、ベースとなる他の食品(たとえば米や大豆)と混ぜて、菌の活動に適切な状態を保つと、わたしたちが「発酵」と呼んでいる作用がおこなわれます。
つまり、日本酒や味噌、醤油などは、発酵のタネである「こうじ」と他の原材料と組み合わせたことで作り出された発酵食品なのです。

《「こうじ」による発酵》

日本酒の場合… 米こうじ+蒸し米(穀物)+水+酵母菌+乳酸菌=日本酒

「こうじ+穀物」でできる発酵食品は、本当に多様です。さらに言えば、前述した塩麹(「こうじ+塩」)のように、穀物以外のベースとこうじを合わせた発酵食品も存在します。「こうじ」の活躍ぶり、恐るべしですね。

「こうじ」を気軽に取り入れやすい、酒粕、甘酒、塩麹に注目!

はるか昔から、私たち日本人の食生活を支えている、優れものの「こうじ」。「こうじ」によって生まれる発酵食品は数多く、たとえば調味料の場合は味噌、醤油、みりん、酢など。酒類は日本酒、焼酎、泡盛など。そのほかに、甘酒や塩麹。さらに、魚や肉、野菜などを漬けこむ調理法の麹漬けなどもあります。また、日本酒の仕込み後のもろみを搾った際に「搾りかす」として残る酒粕にも、「こうじ」はたっぷりと含まれています。

酒粕は、日本酒の原料の米と「こうじ」、そして酵母由来の成分である炭水化物やアミノ酸、ビタミンなどの栄養素がぎゅっと濃縮されています。酒粕を使った料理としては、味噌仕立ての鍋に酒粕を溶かして食す「粕汁」や、酒粕で作る“粕床”に肉や魚を漬け込み、それを焼いて食べる「粕漬け焼き」など。これらは風味豊かな味わいが特長です。また、酒粕をお湯で溶かして砂糖を加えると、甘酒が完成します。

甘酒には、酒粕を主原料とする「酒粕甘酒」のほかに、米こうじが原料の「米こうじ甘酒」もあります。後者は、米こうじに水を加え、保温しながらひと晩かけて発酵させたもの。発酵している間に、麹菌で生成される「アミラーゼ」という酵素がデンプンをブドウ糖に分解し、甘さを生み出します。そのため、砂糖を加えなくても天然の甘みを味わえるのです。また、「米こうじ甘酒」の深みのある旨味は、プロテアーゼという酵素が、タンパク質をアミノ酸に分解することで生まれるものです。

「酒粕甘酒」と「米こうじ甘酒」の大きな違いは、アルコール分の有無。名前には「酒」という字が入っていますが、「米こうじ甘酒」にはアルコール分が含まれていません。そのため、妊婦さんや小さなお子さまでもおいしくいただけます。

甘酒がよく飲まれるようになったのは、江戸時代に入ってからと言われています。栄養がたっぷり入っているため、当時の人たちの夏バテ対策として広まりました(※1)。現代では「飲む点滴」や「飲む美容液」と形容されるほど、疲労回復や美容のため愛飲している人も多い甘酒。そのまま飲むだけでなく、料理をする際、砂糖代わりに使う方法もおすすめです。

(※1)農林水産省Webサイト「消費者相談」
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1712/02.html

「こうじ」を含む発酵食品のなかで、ここ数年人気を誇っているのは、おそらく塩麹でしょう。今や、スーパーマーケットでも気軽に買えるほどポピュラーな存在ですが、塩麹は自宅でも簡単に作れることをご存知でしょうか。

材料は、米こうじと食塩と水のみ。米こうじは、たいていの場合、スーパーの漬物や豆腐の売り場で販売されています。基本的な作り方は以下の通りです。

【塩麹の作り方】

① 米こうじと食塩を3対1の割合で混ぜる。
② ①と同量か、やや少なめの水を加える。
③ ②を、常温で1週間から10日間ほど保管し、その間、1日に1回は空気を入れるように混ぜる。

これだけで、とろっと熟成した塩麹が出来上がります。1日に1回、大切に育てるように混ぜてオリジナルの塩麹を作れば、食生活はより楽しくなりそうですね。

酵素は、発酵の世界の「縁の下の力持ち」!

甘酒についての説明の際、「アミラーゼ」と「プロテアーゼ」という酵素が、甘酒の甘みと旨味を生み出していることを前述しました。

では、酵素とはいったい何なのでしょう。酵素は、微生物である麹菌のような生き物ではなく、自分自身が命をもっているわけではありません。微生物が関わる発酵の段階で、あくまでも“触媒”として化学反応を促す物質です。つまり、酵素がないと、微生物は生きていくために必要な栄養素を生み出せないのです。酵素は、発酵の世界における縁の下の力持ちなのです!

麹菌はたくさんの酵素を生み出します。これらが、穀類や豆類に含まれるデンプン、タンパク質、脂質を分解すると、旨味や甘味が生まれたり、素材が柔らかくなるのです。塩麹に肉や魚を漬けておくと柔らかくなるのは、食材のタンパク質を「プロテアーゼ」という酵素が分解してくれるからです。

また、麹の酵素によって作られる「オリゴ糖」は、腸内細菌“善玉菌”の大好物で、これをエサに善玉菌は繁殖します。さらに、麹の酵素によって生成されるビタミン類は、疲労回復や肌の代謝に役立つといわれています。

人の腸内を元気にし、疲れや美容の悩みの改善にも役立つ「こうじ」は、健康のためにもぜひ積極的に取り入れたいものです。

<参考文献・Webサイト>
・農林水産省Webサイト
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1712/02.html
・厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionaries/food
・斎藤勝裕 著『「発酵」のことが一冊でまるごとわかる』(ペレ出版刊)
・小泉武夫 編著『発酵食品学』(講談社サイエンティフィック)

※記載内容は特定の商品または発酵食品についての効果効能を保証するものではありません。

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