発酵食品に含まれる「麹」のもたらす美容・健康効果3つ+甘酒のすすめ
<目次>

「麹(こうじ)には健康や美容によい作用がある」という言葉を、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。多くの発酵食品に含まれている「麹」には、健康に与える良い影響があると言われています。
麹の持つ力を、「美白」「肌荒れ防止」「アレルギー予防」の3つの観点から紹介します。
また麹で作られた「麹甘酒」の魅力についても紹介します。
厚生労働省認可!発酵食品に含まれる「麹」には美白作用があります
「麹」を含んだ化粧品は、現在数多くのお店で取り扱われています。これにはきちんとした理由があります。コウジ酸(麹菌が作り出すもの)は、厚生労働省の認めた「美白成分」のうちの一つだからです(※1)。この成分は「お酒を造っている杜氏(とうじ)の手が白いこと」から発見されました。
1989年という、今から20年ほども前にすでに厚生労働省によって認可されたこの成分には、チロシナーゼの働きを抑えると言われています(※2)。チロシナーゼは、肌を黒くさせるメラニンを合成する酵素です。この働きを抑制することによって、シミなどの発生を抑えると言われています。また、現在は、「黄色っぽいくすみ」を予防する可能性も示唆されています。
発酵食品に使われている「麹」は、基礎化粧品(薬用化粧品)に配合され、「塗布」というかたちでも利用されています。
(※1)資料No.1-3 コウジ酸を含有する医薬部外品|厚生労働省Webサイトより
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/dl/s1102-8c.pdf
(※2)03/05/09 薬事・食品衛生審議会化粧品・医薬部外品部会 平成15年5月9日議事録|厚生労働省Webサイトより
https://www.mhlw.go.jp/content/shingi___2003___05___txt___s0509-5.txt
麹を含んだ発酵食品は抗酸化作用でニキビなどの防止にも
「美白」も女性にとってうれしい働きですが、発酵食品である麹にはそれ以外に、「肌荒れを防止する」という働きも期待できます。
麹には抗酸化作用が期待できます。体が酸化することによって肌トラブルが起きやすくなったり、老化しやすくなったり、がんになりやすくなったりするのではないかと考えられています。それを抑える働きが麹にはある可能性があります。
抗酸化作用を発揮する成分として有名なのが、「ビタミンC」です。ビタミンCにも強い抗酸化作用があり、よく美容の世界で取り上げられています。また、この「ビタミンC」は、抗酸化物質であるのと同時に、厚生労働省に認められた美白成分でもあります。
麹(コウジ酸)にもビタミンCにも、抗酸化作用と美白作用の両方が期待できるのは、少し面白い話です。ビタミンCはパプリカなどによく含まれていますから、パプリカを醤油(しょうゆ)や味噌(みそ)で焼き上げて食べてみましょう。麹の効果とビタミンCを両方取り入れることができます。
麹にはつらいアレルギーに対抗する力も~発酵食品のすすめ
意外に思われるかもしれませんが、麹には、「アレルギー」に対抗する力もあるとされています。アレルギー反応のうちで、「カテプシンB」という酵素が関係しているアレルギーに、麹は対抗することができるのです。このカテプシンBが動かないようにその働きを抑制することができるため、一部のアレルギーに対して、麹は有効に働くと言われています。
もっとも、これはあくまで「一部の」アレルギーに対して研究結果が出ているに過ぎないので、「麹はすべてのアレルギーに効果がある」というものではありません。このため、過信は禁物です。特に、ひどいアレルギーですでに病院での治療を開始しているという場合は、まずは医師に相談することをおすすめします。
ただ、このような懸念材料があるにせよ、発酵食品が健康にさまざまなプラスの影響を与えることは確かです。また、腸内環境を整えることはすでに知られていますし、現在では骨粗しょう症の予防にも役立つのではないかとも言われています。
「飲む美容液」「飲む点滴」の麹甘酒の魅力
ここまで読んでいただくと、麹はやはり美容や健康に良さそうと理解いただけたのではと思います。その上で、ぜひ知っていただきたい情報を紹介します。ここ数年、美容に関心の高い女性たちを魅了している「麹が原料の飲み物」をご存知でしょうか? それは、ズバリ、「飲む美容液」という異名をもつ麹甘酒です。美容の最新事情に詳しいモデルさんや女優さんのなかにも、愛飲している方がいらっしゃるようで、「飲む美容液」だけでなく「飲む点滴」と表現されることもあるそうなのです。
しかし「美容液」でありながら「点滴」とはどういうことでしょうか。肌にも疲労回復にも効果が期待できるということなのでしょうか。発酵日和でおなじみの東京農業大学教授の前橋健二先生著『砂糖のかわりに麹甘酒を使うという提案』を参考に、甘酒の驚くべきパワーと魅力をたっぷり解説します。
まずは、麹甘酒は何でできているかについて説明します。原材料は、米と米麹、あとは水だけです。ほんの3つでありながら、発酵という過程で微生物が活躍してくれることで、優しく深みのあるうま味と甘味が生み出されます。具体的には何が起こっているかというと、麹菌に含まれるプロテアーゼという消化酵素が、お米のタンパク質をアミノ酸やペプチドに変換して、うま味を引き立てています。同じように、アミラーゼという消化酵素が、お米のデンプンをブドウ糖やオリゴ糖に分解して甘味が生まれます。天然の甘味なので、しつこくなくてマイルドな点が特徴です。
栄養素は350種以上。素早い疲労回復効果が期待できます
現代の料理で使われる甘味の代表格は、砂糖ですよね。砂糖は、ほぼ「ショ糖」という単一の甘味物質でできています。それと比べて、麹甘酒は複数の甘味物質に加え、うま味も併せもっています。そのため、前橋先生は、麹甘酒を砂糖代わりに使うことを勧めていらっしゃるのです。
しかも、名前に「酒」が入っていながらアルコールはいっさい含まれていない点も好ポイント。お酒が苦手な方や妊婦さん、お子さんにも安心ですね。ちなみに、甘酒には、麹甘酒とは種類の違う、酒粕で作る甘酒もあります。こちらにはわずかにアルコールが入っていて、砂糖を加えて甘みをつけています。栄養価は麹甘酒のほうが高いので、美容や健康に摂り入れたい方には麹甘酒がオススメです。
スーパーマーケットに並ぶ甘酒を見ると、「糀甘酒」と表記されたものも見かけます。「麹」は中国から伝来した漢字で、米、麦、豆などから作られる「こうじ」全般を意味します。一方の「糀」は明治時代に作られた和製漢字で、米からできる「米こうじ」のみのことを言います。つまり、「麹甘酒」と「糀甘酒」は基本的には同じものと思って良いと思います。
「麹」と「糀」について詳しくは、発酵日和の下記ページをご覧ください。
麹と糀 「こうじ」を表す2つの漢字物語〜奥深きこうじの世界に触れてみる
気になる麹甘酒の栄養面については、栄養素が全部で350種以上も含まれています。医療現場で実際に使用される点滴に匹敵する栄養がたっぷり入っているため、「飲む点滴」と呼ばれるようです。人間の体内では生成することのできないビタミンB群が豊富という点は特筆すべきところで、ビタミンB1、B2、B6、そして葉酸は、糖質などのエネルギーを素早く体内に取り込む働きをしてくれ、疲労の回復を促してくれます。さらに麹はブドウ糖も作るので、ビタミンBのサポートによって疲労回復効果が期待できるのです。
天然のセラミド成分でアンチエイジング
麹甘酒にはオリゴ糖も含まれています。このオリゴ糖が、乳酸菌をはじめとする善玉菌のエサになることで、病気予防に不可欠ともいえる腸内環境を整える役割を担います。そうすると免疫細胞が整い、免疫力のアップが期待できます。さらには、食物繊維が豊富に含まれていることも、腸内環境改善という観点からは見逃せません。
ほかにも、血圧を下げる効果があるといわれるペプチド、悪玉コレステロールを減らすレジスタントプロテイン、持久力や筋力を高めてくれるアミノ酸などの成分が含まれています。つまり、滋養強壮、血圧の低下、便秘の改善なども期待できるのです。
そして、「飲む美容液」と称賛されている理由は、麹甘酒には美肌とアンチエイジング効果が期待できるため。麹甘酒に含まれるアミノ酸は皮膚の主成分のひとつで、肌の保湿機能を担っています。それから、グルコシルセラミドというスフィンゴ糖脂質の一種も含まれており、これは肌の角質層にあるセラミドのもとになる成分。肌の乾燥や肌荒れは、セラミドの減少が一因ともいわれているので、お肌の健康を保つのにも役立ちそうですね。
さまざまな栄養素、成分を含んでいる麹甘酒が、江戸時代の頃から、おちょこ一杯程度を飲むだけで効果があると言われ、夏バテ防止として庶民に愛飲されてきたのも納得ですね。
まとめ
麹を含んだ食材や基礎化粧品には、さまざまな魅力があります。麹(コウジ酸)は厚生労働省が認めた美白成分であり、数多くの基礎化粧品に配合されています。また、高い抗酸化作用が期待できるので、肌トラブルなどへの対抗策としても利用できると考えられます。
「美白作用が期待できるとされている栄養素を持つ食材」「抗酸化作用を持つ食材」として「パプリカ」があるので、一緒に摂ってみるのもよいでしょう。
また、麹には一部のアレルギーに対抗する力もあるという研究結果もあります。
塗ってよし、食べてよし、飲んでよし。発酵食品である麹の力を上手に利用していきたいものですね。
- 参考文献
- 『砂糖のかわりに麹甘酒を使うという提案』前橋 健二、あまこ ようこ 著 アスコム