麹味噌・こうじみそとは?&味噌をもっと楽しむための基礎知識
<目次>
店頭にならんだ味噌コーナーでみかける「こうじ味噌」。「麹味噌」「糀みそ」といった表記もあります。どれもなんだかおいしそうで、気になりますよね。
この麹味噌と、普通の味噌は違うものなのでしょうか?どんなところが良いのか、味の特徴は?いまひとつわかりづらいかもしれません。……ということで、麹味噌から始まって、味噌全般について、改めて発酵日和編集部が調べてみました。少し知るだけで、味噌選びが楽しくなりますよ!
麹味噌・糀味噌とは?
実はこの「こうじみそ」という言葉、公式の定義はなさそうです。原材料や製法、塩分、味、色……といった特徴で名付けられる言葉ではありません。
味噌業界の団体である「全国味噌工業協同組合連合会」などのデータを見ても、そうした種別はありません。
全国味噌工業協同組合連合会 - みその伝統的食文化の継承と発展・向上を担って60年。
そもそも、味噌づくりには基本的に麹が使われています。
では麹味噌とはなんなのかと言うと……、「製品名」と思っていただくのが良さそうです。特に麹にこだわって造った味噌に、造り手のプライドや思いを込めて「こうじ」の名を冠する。そうした、日本の発酵食品・醸造の伝統の豊かさを表す言葉なのではないでしょうか。
例えば、麹の使用割合が高い味噌を、麹味噌と呼ぶことがあります。通常、味噌の製造過程では、各種の麹と、米・麦・大豆などを混ぜ合わせ発酵・熟成します。その際のブレンドの割合で、麹を多めに使い、理想の味を生み出す工夫をし、これを宣言するために「麹味噌」と名付けたり、自家製の、こだわりにこだわり抜いた特別な麹を使用しているので、そのプライドを込めて麹味噌と名付けています。
麹のつぶ感をあえて残すことで独自の食感と味を追求したから麹味噌、という場合もあります。
なお、「麹」とは、中国から伝わった漢字で、「こうじ」全般を指す言葉。「糀」とは、明治時代にできた漢字で、特に米からできる「米こうじ」を表す言葉です。基本的には同じものと思って良いと思います。
「麹」と「糀」の違いについては、発酵日和の下記ページをご覧ください。
麹と糀 「こうじ」を表す2つの漢字物語〜奥深きこうじの世界に触れてみる
そもそも味噌とは? 米・麦・大豆
味噌全般についても復習しておきましょう。
味噌をシンプルに定義すると「大豆と米・麦と麹を合わせて、発酵させたペースト」となります。正確な定義をお知りになりたい方は、ちょっと難しいですが、消費者庁のページ↓をご覧ください。
みそ
次に掲げるものであって、半固体状のものをいう。
1 大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦等の穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの若しくはこれに米、麦等の穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、これを発酵させ、及び熟成させたもの
2 1に砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類をいう。)、風味原料(かつおぶし、煮干魚類、こんぶ等の粉末又は抽出濃縮物、魚 醤 油、たん白加水分解物、酵母エキスその他これらに類する食品をいう。以下同じ。)等を加えたもの
消費者庁告示 みそ品質表示基準
さらに、味噌とひとくちに言っても、いろいろな分類ができます。
わかりやすいのは、材料による分類です。
- 大豆+米麹+塩=米味噌
- 大豆+麦麹+塩=麦味噌
- 大豆+麹+塩=豆味噌
- 上記3種類の混合=調合味噌
もっともメジャーなのが、米味噌です。実に全体の8割以上を占めています。残りの2割弱が、その他の3種類となります。
一般社団法人食品需給研究センター 資料
米味噌を基準として、麦味噌は米味噌とは違う独特の香りがあり、豆味噌は濃厚な味、というのが一般的な特徴です。
さらに詳しく 味噌のこと 味・色・呼び名
さらに、味噌は味の傾向でも分類ができます。甘味噌、甘口味噌、辛口味噌などと言われます。通常は、塩の割合が少なくなるほど甘く、また麹の割合が多くなるほど甘くなります。
色もさまざまですね。基本的には、熟成期間が長いものが、より濃い色になっています。ただし、原材料や製造方法の違いによっても、色は変化します。
「白味噌」「赤味噌」と言った分類は、もちろん色による分類です。ただ、これは少しわかりづらい側面もあります。例えば「白味噌」と言った時、関西の甘い味噌を指す場合もあれば、一般的に白い味噌を指したりもします。
余談ですが、NHKの朝ドラ『エール』で、夫婦の出身地の違いを表す重要な小物として登場したのは、「八丁味噌」。愛知県で造られる、長期熟成させた豆味噌です。濃い色と、名古屋を中心とした味噌を使った名物料理で有名です。
このように、本当にバラエティ豊かな味噌の中から、自分好みの味噌を見つけるのは、なかなか難問です。おおまかな傾向としては、「白いものは甘い」「色の濃いものは発酵食品らしい複雑で、強めの味」ということができますが、もちろんそれがすべてではありません。塩分濃度や麹の割合は、パッケージに書いていないこともしばしばです。後ほど、味噌をより楽しみながら選ぶためのアイデアをご紹介します。
味噌の機能性・メリット
味噌には、必須アミノ酸9種類をすべて含む良質なタンパク質のほか、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など豊富な栄養成分が含まれています。さらに、大豆タンパク質はそのままでは消化吸収されにくいのですが、味噌になると酵素の力で消化吸収されやすくなり効率のよい吸収が期待できます。
さらに、がんや生活習慣病のリスク軽減、老化防止、アレルギー反応の抑制などの効果が、厚生労働省や国立がんセンターをはじめとする専門機関で研究・報告されています。
気になる塩分ですが、発酵食品の世界の第一人者・小泉武夫さんによれば、むしろ積極的にとることを勧めたい、とのことです。
味噌は食塩を含むため血圧を上げるのではないかと心配される。しかし、味噌の食塩濃度は12%程度で、味噌汁にすると多くは1%程度(味噌汁1杯あたり約1.4g)である。これは他の食品の1回の摂取量と比較して必ずしも多くはない。また近年の研究では、味噌の摂取によって血圧は上昇しないと報告されている。古くから日本人の食文化を支えてきた味噌の健康機能に着目して積極的に味噌や味噌汁を摂取することを勧めたい。
『発酵食品学』小泉武夫編著 講談社サイエンティフィク
麹味噌の手作りも、意外にカンタン
味噌は、発酵調味料の中でも比較的手軽に手作りできます。「麹味噌」と呼びたくなるような、麹にこだわった「手前味噌」も作れちゃいます。
発酵日和では、シンプルレシピをご紹介しています。これを基準に、お好みの麹味噌を作ってみてください。
材料は水と乾燥大豆、麹、塩だけ。
そして大豆を煮たあと、材料を混ぜ合わせ、あとは熟成するのを待つだけ。……かんたんですよね。
自分で作ったとなれば、普段何気なく使っている味噌にも愛着が湧くというもの。さらに「次はちょっと甘めに……」「熟成期間を長くしたらどうなるかな?」等々、自分好みの味を追求していく楽しみもあります。編集部としても、ぜひおすすめしたい、発酵食品の楽しみ方です。
味噌の味を知るには、なんと言っても味噌汁。だし無しか、控えめで
最後に、自分好みの味噌を見つけるためのアイデアをご紹介します。
まず味の違いを知るには、味噌汁が一番だと思います。その際、だしは使わないか、使っても控えめで。これで味噌が持つ本来の味を確かめることができます。
ただ、店頭では、味噌はたいていそれなりのサイズのパックになっていますよね。これをたくさん買って試すのも大変です。
そこで、インターネット通販がお勧めです。ショッピングサイトで「味噌 食べ比べ」「味噌 セット」「味噌 贈答用」などと検索すると、いくつかの味噌を小分けにしたセット製品が出てきます。こうしたものを買ってみて、お好みの味噌を見つけてみてはいかがでしょうか。
また、伝統的な味噌屋さんはもちろんですが、今では日本各地の味噌を集めた専門店もあります。プロの解説を聞きながら、また試食・味見をしながら選ぶことができるので、味噌のことをより良く知ることができますね。
佐野みそ亀戸本店-東京 | 味噌・みそ汁専門店
- 参考文献
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- 『発酵食品学』小泉武夫編著 講談社サイエンティフィク
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。