「湖里庵」の鮒ずしを発酵する「魚治」の蔵は、代々主人が守り、230年もの間受け継がれてきました。魚治の代表であり、湖里庵主人の左嵜謙祐さん(41歳)は、小学生の頃から蔵の守りの手伝いをしてきたそうです。今も毎日蔵に入っては、香りに違和感はないかなど、センサーを働かせます。
左嵜謙祐(さざき けんすけ)(料亭旅館「湖里庵(こりあん)」主人)
湖里庵主人の左嵜謙祐さん(41歳)は、「京都 吉兆」で修業を積んだ後、「湖里庵」を継ぐことに。約230年間作り続けている鮒ずしを現代に伝えるために、創意工夫を凝らした料理を生み出します。自身のことを料理人ではなく、「ふなずしや」と表現します。
鮒ずしを作ることは、生活の中でいただいた役割のようなもの
「鮒ずしは菌が作ってくれる恵の食。菌のお世話をしている感覚で、2年間調整を繰り返します。鮒ずしを作ることは、生活の中でいただいた役割のようなものです」と話す左嵜さん。その柔らかい表情と、肌の美しさは、発酵食の伝承人を感じさせるものでした。
変わらぬ味で作りながら、次の代に引き継いでいく鮒ずし
左嵜さんは、鮒ずしを「昔も今もずっと変わらない味で作り続けている」と言います。
ニゴロブナを塩漬けにする際は、ミネラルをたっぷり含んだ若狭の海水塩を使用。常温で二年熟成させるため、時代に合わせて塩分を減らすことはありません。
通常、鮒ずしはプラスチック桶に漬け込まれることが多いですが、「魚治」では6年前に、昔ながらの木桶を復活。これは、実に50年ぶりのこと。漬け込むお米は「滋賀旭」という品種を中心に、菌が良いと思う米になるようにブレンドしているそうで、あくまでも考えの中心にあるのは菌の働きです。
左嵜さんが先代から受け継いだ大切な言葉は、伝統の発酵食である鮒ずしを「次代につなげる“歯車”になれ」。鮒ずしを変わらぬ味で作りながら、時代の変化を捉え、次の代に引き継いでいくことを実践されています。
湖里庵 (こりあん)
http://www.korian.net
滋賀県高島市マキノ町海津2307
0740-28-1010
魚治 (うおじ)
http://uoji.co.jp/
滋賀県高島市マキノ町海津2304
0740-28-1010