食品を保存する方法としての発酵
冷蔵庫という文明の利器がまだなかった時代、人々は知恵を絞って「食品をいかに長く保存するか?」に挑戦し、さまざまな方法を編み出してきました。
例えば、食べ物を乾燥させて干物や乾物にしたり、煙でいぶして燻製にしたり、塩や砂糖に漬け込んだり、灰の中に入れておいたり。これらの方法には、いずれも腐敗菌を増えにくくする効果があります。
発酵もまた腐敗菌の繁殖を抑え、食べ物の保存性を高めるひとつの方法です。さらに発酵によってうまれたアルコールや酢酸、乳酸そのものにも殺菌効果があります。
「拮抗作用」は弱肉強食!? 微生物たちのバトル
「発酵と腐敗のちがいとは?」で触れたように、人にとって有用な微生物の働きを発酵と呼び、人によって不快で有害な働きである腐敗と区別しています。
微生物の世界の特質として、一定の環境の下で複数の微生物がいた場合、ある微生物が繁殖を独占し、他の菌の増殖を許さないという作用が働きます。それは微生物たちの生存競争。弱肉強食のバトルです。
「拮抗作用」と呼ばれるこの作用によって、発酵を行う微生物が優位に立てば、腐敗を招く菌の繁殖や侵入が抑えられ、その結果、発酵食品は腐らず長期保存が可能になるのです。
経年で風味を増す発酵食品も
また、長期保存されることで味わいや風味を増す発酵食品もあります。
例えばヴィンテージと呼ばれる当たり年のワインや年代物のプーアール茶葉のように、発酵食品の中には、数十年も長期保存することで風味が深まる食品が存在します。
日本のなれずしの中にも30年も寝かせた珍味があるそうです。長期にわたって熟成が進んだ発酵食品の味わいは、古くから人を魅了してきたのです。
発酵食品になぜ賞味期限があるの?
けれども、私たちが日常的に食べている納豆やヨーグルトには、賞味期限が記載されています。「保存性が高いとされる発酵食品なのにどうして?」と疑問に思ったことはないですか?
それは、食品が流通する際に、衛生上の問題から殺菌処理が施され、人工的に菌の繁殖が抑えられているためです。
食べごろを迎えた段階で殺菌処理を行い出荷されている発酵食品もあります。そのため賞味期限を過ぎたものは風味が落ちている可能性が高いのです。
また、ヨーグルトなどに異臭や変色があった場合は腐っている可能性大!
その他の発酵食品も、有色のカビの発生が認められた場合は要注意です。
いずれにしても、賞味期限が明記されている場合、開封後は早めに食べきるようにしましょう。
※記載内容は特定の商品または発酵食品についての効果効能を保証するものではありません。