発酵の力で、内側からすこやかに美しく。
普段の生活で発酵を楽しむコツやレシピ満載の、美人を醸すWebメディア。

発酵食品事典

米麹とは? 日本の食文化を支える麹菌が生み出す「発酵の素」

2021.2.22

<目次>

あらためて、米麹とは? 米+麹菌で、「飲む点滴」にまで
米麹を生み出す「麹菌」とは?
米麹以外の「麹」 麦麹、豆麹
米麹の造り方
米麹の使い方
米麹を買おう、と思ったら
麹菌が持つ「酵素」について

発酵食品のことに少し興味が出てくると、必ず出会うことになる「米麹」という言葉。もちろんスーパーの店頭で売っていて、手軽に利用できる食材として、理解はできます。

しかし、実際のところそれがなんなのか、「糀」とは違うモノなのか、「麹菌」との関係、はたまた甘酒や塩麹に使う以外にどんな利用方法があるのか……となると、少しわかりづらいですよね。

そこで、改めて、この日本が誇るスーパーフードについて、まとめてみました。少しくわしく知ると、発酵食品がある生活が、もっと楽しくなりますよ!

あらためて、米麹とは? 米+麹菌で、「飲む点滴」にまで

米麹とは、お米に「麹菌」を繁殖させたものです。すでに甘酒や塩麹をご自分で作っている方ならご存じだと思いますが、お米の粒に、白い粉のようなものがまぶされたような状態になっています。

専門の醸造メーカーでは、この米麹を使って清酒(日本酒)が造られます。そのほかにも、米味噌やみりんなど、いろいろな食材が生み出されています。

一方、一般の家庭でも、もちろん利用されています。「こめこうじ」「こめ糀」「米麹」、また単に「こうじ」などとしてスーパーの店頭などで製品として普通に売られており、これを使って甘酒や塩麹、醤油麹、漬物などが作られています。

その最大の特徴は、麹菌が、お米の味や栄養を変化させることです。一例を挙げると、米麹にさらにお米を加えて作った甘酒は、「飲む点滴」とまで言われます。お米の成分をもとに、麹菌がお米の成分を変化させ、人体に取り入れやすいようにしてくれる、というわけです。

もちろん、さらにバラエティ豊かな日本古来の食べ物の土台になり、発酵に関わって、私たちの体にとって欠かせない栄養や、また食卓の楽しさを生み出してくれています。

言ってみれば、「いろいろな食べ物・飲み物を生み出す魔法の粒」ですね。

ちなみに、「糀」も「麹」も、基本的には同じ「こうじ」と思っていただいて良いでしょう。「麹」とは、中国から伝わった漢字で、「こうじ」全般を指す言葉。「糀」とは、明治時代にできた漢字で、特に米からできる「米こうじ」を表す言葉です。詳しくは、発酵日和の下記ページをご覧ください。

麹と糀 「こうじ」を表す2つの漢字物語

米麹を生み出す「麹菌」とは?

米麹にとって重要なのは、「麹菌」です。菌という言葉のイメージ通り、とても小さな生き物=微生物と思っていただくとわかりやすいでしょう。

この麹菌は、「コウジカビ」とも呼ばれます。その名の通り、微生物の中でも、カビの仲間です。菌、カビというとあまり良いイメージがないかもしれませんが、こうした微生物は、今お話している米麹のほかにも、さまざまな食べ物、また医薬品や工業製品なども生み出します。さらには、人間の腸内にいる細菌が、健康増進や免疫力アップに深く関わっているということも、良く知られるようになってきました。

さて、その麹菌・コウジカビですが、実はたくさんの種類があります。中でも「アスペルギルス・オリゼー」という種類の麹菌の仲間の一部は、日本の醸造研究を振興している「日本醸造学会」により日本の「国菌」として定められるほどのスーパースターです。清酒や味噌を始め多くの醸造に使われており、つまり、それだけ日本の食文化に深く関わっている重要な存在、と言えるでしょう。

このアスペルギルス・オリゼーを初めとする麹菌・コウジカビがお米に繁殖したものが、私たちが米麹と呼んでいるものです。

米麹以外の「麹」 麦麹、豆麹

米麹以外にも、さまざまな原料を使った麹が存在します。メジャーなところでは、麦に麹菌を繁殖させた麦麹、大豆に麹菌を繁殖させた大豆麹などがあります。麦や大豆は、醤油や味噌のもとですね。麦や大豆の麹を、さらに麦や大豆に加えて微生物を繁殖させることで、醤油や味噌ができあがります。

さらには、玄米で造った玄米麹、黒米で造った黒米麹、雑穀で造った雑穀麹など、各メーカーが工夫をこらした製品を販売しています。それぞれに特徴があり、自分にあった麹を探すのも、発酵食品がある生活の楽しみのひとつです。

大豆麹

米麹の造り方

これまで、「お米に麹菌を繁殖させたもの」と簡単に言ってきた米麹ですが、実はなかなか繊細な存在です。というのも、米麹のエッセンスは麹菌という微生物だからです。

微生物は、自らに適した環境でないと、うまく増えることができません。温度や湿度、そのほかの微生物の状態、また自分が利用する素材(この場合はお米)の状態を、人間側がシビアに管理してあげなければなりません。本格的な清酒造りでも、この米麹を造る工程に一番気を使うといいます。一般家庭で気軽に手作りできるもの、とは言いづらいでしょう。

基本的には、下記のようなプロセスを経て、米麹ができあがります。

①精米……お米から余分な成分を取り除き、いわゆる白米に
②蒸す……水につけた後、蒸気で蒸し上げる
③「種(タネ)麹」をまく……麹菌をお米に付着させる
④発酵を進める……「床もみ」「切り返し」などの工程で発酵を進める
⑤米麹完成……お米の芯の部分にまで、麹菌が繁殖

ちなみに、麹菌そのものと言える種麹は、市販されています。一般のスーパーにはないかもしれませんが、専門店やインターネット通販などでは、手頃なお値段で購入可能です。

米麹の使い方

これまでのお話の通り、麹はさまざまな食品の基礎となるものです。米麹の使い方として一般的なものをご紹介しておきます。

【甘酒】
さきほど「飲む点滴」と書いた通り、甘酒は栄養豊富で、人体に吸収されやすい状態になっています。含まれる栄養成分は350種類以上、実に砂糖の60倍です(上白糖の場合、ごくわずかにナトリウムやカリウムなどが含まれているだけ)。ビタミンB1、B2、B6、葉酸などを含み、人間の疲労回復を助けてくれます。(※1)

発酵日和でも、その作り方や健康効果を特集しています。ぜひご覧ください。

年中飲みたい! 甘酒は甘くておいしい「飲む点滴」
放ったらかしで簡単 甘酒のつくり方

(※1)『砂糖の代わりに糀甘酒を使うという提案』前橋健二・あまこようこ著 アスコム

【塩麹】
近年人気の塩麹も、もちろん米麹から造ります。食材に塩を振る代わりに塩麹を使うと……、あら不思議、旨みが増し、いつもの味が一段とグレードアップします。

塩麹(しおこうじ)とは?|肉や魚と相性抜群の万能調味料の作り方・レシピ

【醤油麹】
塩麹も気軽に手作りできますが、さらに簡単にできてしまうのが、醤油麹。食卓でお醤油を使うのと同じように使えるので、さらに気軽に発酵食品をとることができます。

醤油麹とは? その味、作り方、使い方&健康効果をカンタンまとめ

この他にも、その旨み・甘みを生かすような場面は、数多くあります。伝統的には、大根を甘く漬けたべったら漬けが有名です。パンケーキのタネに入れる、おかゆに入れる……近頃では、お酒に麹を入れて風味を増した製品も人気ですね。やや上級編としては、自家製味噌を造ることもできます。

米麹を買おう、と思ったら

よし分かった、じゃあ米麹でなにか造ってみよう……と思っていただいた方のために、購入情報です。

基本的には、少し大きめのスーパーなどで購入することができます。1kg、1,000円程度からです。大きく分けると「生麹」と「乾燥麹」があります。使い方・レシピによって、どちらかを使うように指定されていることがあるので、その点には注意が必要です。ちなみに、一般的に生麹は麹菌の力が強く、一方乾燥麹は長期保存が可能です。

麹菌が持つ「酵素」について

最後に、少しだけ発酵食品の奥深さのご紹介です。

これまで、「麹菌が米を変化させる」と書いてきました。その働きの中心にあるのが、「酵素」です。

酵素とは、言わば生命のしくみの基礎の基礎。私たち人間も、またカビのような微生物も、生きていくのに酵素の力を利用しています。

例えば、「ご飯をよくかむと甘くなるのは、デンプンが糖に変わるから」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。これも、人体にある「アミラーゼ」という酵素が、デンプンを分解したから起こることです。もちろんこのほかにも、さまざまな場所で酵素が働いています。

同じように、麹菌の場合も、さまざまな種類の酵素を持っています。これを利用してお米の栄養素を私たち人間にとって利用しやすいものに変えてくれる、というわけです。

専門家の解説もひもといておきましょう。

麹菌(Aspergillus 族)はカビの一種です。麹菌の働きは非常に優秀で多くの酵素を持っています。

麹菌の働きは物質(ここでは素材)を分解する力が非常に大きいのです。米、麦、大豆、野菜、果物に含有するデンプンやタンパク質を分解し、元の素材とまったく異なる物質に変換する力を持っています。この変換した物質はアミノ酸、ブドウ糖、各種の有機酸などで、人間にとっては誠に有益な成分です。この分解と変換は麹菌が持つ酵素の活動力によるものですが、麹菌は実に100種類以上と言われるほどさまざまな酵素を持っています。

『おもしろサイエンス 発酵食品の科学 第3版』坂本 卓著 日刊工業新聞

微生物は、私たちが暮らす世界のどこにでも存在しています。麹菌は、白麹、黄麹、黒麹、紅麹などなど、多くの種類があり、また少しずつ特性が違います。そしてむかしの人たちは、これらを顕微鏡もない時代から選び取り、利用して、おいしくバラエティ豊かな食べ物を造ってきたわけです。本当に驚かされますね。

<参考文献・Webサイト>
『おもしろサイエンス 発酵食品の科学 第3版』坂本 卓著 日刊工業新聞

キーワード

おすすめ記事

ページの先頭へ