果物の秋、おいしい恵みが余ったら
ぶどう、梨、りんご、柿など、秋になると八百屋さんの店先には色鮮やかなフルーツが一斉に並びます。もちろんそのまま食べてもおいしいですが、多く手に入って食べきれないとき、形が不揃いなものや熟れてしまったものを安く買えたときには、保存食にして長く楽しむのもひとつです。
砂糖を加えて煮詰めるジャムやコンポート、ドライフルーツにして保存するのも手ですが、秋の果物の中には発酵させてお酢にするのに向いている果物があります。
その代表的なものが柿。糖度が高い柿は発酵させやすく、できあがった「柿酢」は和食で活躍する調味料になります。
柿をまるごと2ヵ月間発酵!
柿を皮がついたまま発酵させてつくる「柿酢」のレシピをご紹介します。
材料
完熟した柿 適量(甘柿・渋柿どちらでも可)
※皮ごと使うので無農薬のものがオススメです。
(発酵補助として以下の材料も)
- ドライイースト 少量
- 水 適量
- 米酢 40ml程度
梅酒を漬けるときのようなガラス瓶を用意し、煮沸消毒かアルコール消毒をしておきます。これを怠ると保存中にカビが発生することもあるので、清潔さには気をつけて!
柿は糖度が高いものなら甘柿・渋柿のどちらでも構いません。軽く汚れを拭き取るか軽く水洗いしてヘタを取り除きます。皮には発酵で働く微生物が付いているので洗いすぎないように気をつけます。皮ごと四つ切りにして瓶に詰め、すりこぎなどで果肉を潰します。よく熟れて柔らかいものなら楽に潰せます。
果汁の中に果肉が浸かるようにして保存します。ここでドライイーストと水を混ぜたものを加えると、この後のアルコール発酵の助けになります。アルコール発酵をしている間(1週間程度)は、発生した二酸化炭素を逃すように瓶のフタを開けておきます。アルコール発酵の泡が落ち着いたら、一度濾して、水分だけを取り出します。
次は酢酸発酵です。放っておいても皮に付着していた酢酸菌が活躍しますが、発酵をよりしっかりと促したい場合は少量の米酢を加えるとよいでしょう。酢酸発酵の間も瓶のフタは開けておきます。虫が入らないように防虫ネットをかけておきましょう。
仕込んでから2~3ヵ月経って酸味が感じられるようになれば完成です。
温度管理で酢酸菌を支えよう
このように、柿は、酵母によるアルコール発酵の後、酢酸菌による酢酸発酵を経て、柿酢になります。鮮やかなオレンジ色で、まろやかな酸味があり、ほんのりと柿独特の甘さも感じられます。
理論上は、柿だけでも柿酢は作れますが、注意すべきなのは温度管理。酵母菌は20℃以上で低温発酵させて柿のエキスを上手に引き出します。地域にもよりますが、本州であれば柿が旬な頃の気温に近いので、常温保存でもうまくいくでしょう。
一方、酢酸菌は30℃前後で活発になるので、日に日に気温が下がってくる秋には常温ではなくやや高い温度で管理することが大切です。ストーブをつけているリビングの片隅に置く、寒い日にはタオルで瓶を巻くなどの工夫をしてみてください。
秋口に仕込んだ柿酢をおせちに使うことも
酸っぱい匂いがして、舐めて舌に酸味を感じられるようになったらできあがりです。
網目の細かいネットやガーゼで濾して果肉と水分を分離させます。重しをして長時間置いて濾過させると透明度が上がります。
柿酢はお寿司の酢飯や酢の物和えに、秋口に仕込んでおけばおせち料理のなますに使うことも。加熱せずにそのまま置いておくと発酵は引き続き進み、徐々にまろやかさを増していきます。
「柿が赤くなれば、医者は青くなる」と言われるほどに栄養価が高いフルーツ、柿。そのまま食べるのに飽きたら、一度柿酢つくりにチャレンジしてみませんか?
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。