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免疫力を上げる食べ物リスト 〜日々の食生活で免疫力を改善したい方におすすめ

免疫

「免疫力」。……気になる言葉ですね。

健康な状態を維持するのはもちろん、花粉症やアレルギーも、免疫機能と関係があります。毎日を楽しく快適に暮らすために、もし意識して免疫力を上げられるなら……。そしてお手軽で楽しいことだったら、言うことナシ、です。

ということで、免疫力を上げるのに良いと言われる食べ物を集めてみました。

そもそも免疫とは?

免疫とは、体内に侵入した「異物」から体を守るための仕組みです。

わたしたちの身の回りには、体に良くないウイルスや細菌、花粉などが存在しています。なにかのきっかけで体内に入り込んだ場合、それは「異物」となります。
この異物を排除しようとする体の働きが、免疫機能です。体は複雑な働きをするので、免疫システムと呼ばれることもあります。免疫システムの一部として働く細胞を免疫細胞、また免疫細胞が作り出す物質を免疫物質と呼びます。

免疫システムは異物を排除しようと働きますが、働きすぎるとアレルギー反応を引き起こす原因にもなります。花粉やハウスダストなどのアレルギー物質が体内に入り、免疫システムがバランスを欠いた状態で働くと、結果として目や鼻などに症状が出ます。言いかえると、適切に免疫が働くことが「免疫力が高い状態」と言えるでしょう。

免疫力を上げるには? 睡眠・適度な運動・そして「食」と「腸」

ひとくちに免疫と言っても、ヒトの体は思ったより複雑なもの。最先端の医学でも、まだまだわかっていないことが多いです。

とは言え、やはり土台になるのは健康的な日常生活。食事・睡眠・適度な運動です。7〜8時間の睡眠や(個人差はあるものの)、ウォーキングやジョギングなどの運動は多くのお医者さんが勧めることです。(できるだけストレスをためないように、というのも重要。……ということで、発酵日和では、常々発酵食品がある楽しい生活をお勧めしています)

さらに、近年話題になっているのが、「腸」と免疫の関係です。

敏感なみなさんは、「腸活」や「腸内フローラ」、さらには「腸には免疫細胞の6割以上が集まっている!」といった言葉も目にしているかもしれません。専門的には「腸管免疫」と呼ばれます。

つまり、腸は最大の免疫器官! とも言えるのかもしれません。

腸管の主要な働きは消化吸収である。しかし免疫器官としても極めて重要である。多くの病原細菌は口から入り、腸などを通して体内に侵入する。これらの侵入物から身を守るために自己防衛体制として、腸管には、からだの中で最大の規模の免疫器官が配置されている。すなわち腸管には免疫の働きを担う細胞や、侵入者と直接戦うたんぱく質である抗体(主として免疫グロブリンA(IgA)の数や量はからだ全体の60%以上が存在している。
〜中略〜
また最近、この腸管免疫の発達や働きを維持するために腸内細菌が重要な役割を果していることが明らかになった。すなわち、これら腸管免疫系の細胞にはトル様受容体が発現しており、これが腸内細菌体成分を認識し、その情報によって腸管免疫系が正常に働くよう調節している。

公益財団法人 腸内細菌学会 |用語集|腸管免疫(gut immunity)

つまり、腸は最大の免疫器官で、免疫力と腸内細菌は密接に関係している!とのことです。言いかえれば、下記のようになるでしょう。

「腸内の環境が悪化すると、免疫力が低下する恐れがある」
「腸にいいと言われる食べ物で腸内環境を整えることが、免疫力アップにもプラス」

ひと言でいえば、腸を整えることは免疫にいい(体全体にも)、とシンプルなお話に。

プロバイオティクスとプレバイオティクス

腸の健康と言えば、「腸内細菌」がまっ先に思いつきます。これまで発酵日和がこだわってきたテーマでもあります。

腸内には細菌がおよそ1000種類、100兆個も生息していることがわかっています。そしてこの細菌は、大きく以下の3つに分けられます。
・善玉菌
・悪玉菌
・日和見菌(中間の菌)

ヒトの腸内ではこれらの菌が関係しあい、バランスをとっています。健康的な腸内は、善玉菌が優勢になっています。

善玉菌として有名なのは、ビフィズス菌や乳酸菌です。善玉菌は腸内で乳酸や酢酸などを作ります。その結果、悪玉菌の増殖を抑え、食中毒菌や病原菌による感染を予防し、発がん性をもつ物質を作りづらい腸内環境を作ります。さらに、善玉菌の体そのものにも、免疫機能を高める物質が含まれているという報告もあるようです。

悪玉菌は不規則な生活は偏った食生活、ストレスなどで増えていきます。そしてこれら悪玉菌は肥満や糖尿病、大腸がんなどの病気と密接な関係があることがわかっています。

日和見菌は腸内の善玉菌と悪玉菌のより優勢な方の味方をします。つまり、善玉菌の多い状況であれば、より腸内環境を改善してくれますが、悪玉菌の多い状況だとより腸内環境を悪化させてしまいます。

善玉菌を増やすには、「プロバイオティクス」に注目する必要があります。プロバイオティクスとは、食べた時に、ヒトの体にいい影響を与えてくれる微生物のことです。もしくは、その微生物を含む食品を呼ぶこともあります。具体的には、ヨーグルトや納豆、キムチなどがあります。

さらに、「プレバイオティクス」も重要です。プレバイオティクスとは、善玉菌のエサになり、善玉菌を増やす働きのある成分です。オリゴ糖や食物繊維がそれにあたります。

いったんまとめ

前置きが長くなりました。ここまでのお話をまとめておきます。

・免疫力を上げるには、「腸」が重要
・そのために、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)やプレバイオティクス(食物繊維、オリゴ糖など)が大事

……となります。続いて、具体的な「免疫力を上げる」食べ物リストをご紹介します。

「免疫力を上げる」食べ物リスト

発酵食品

【ヨーグルト】

ヨーグルト

おなかの調子を整える、といえばやはりヨーグルト。ドリンクタイプも含め、もはや定番を通り越して「必須」かもしれません。

ヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌が含まれています。前述の通り、プロバイオティクスであり、増えて欲しい腸内の善玉菌を増やすことにつながります。

近年ではその研究がさかんに進み、いろいろな製品がさまざまな乳酸菌の名前を冠して売られています。ただ、それだけに迷ってしまって、むしろ続かない……という逆転現象もあるかもしれません。その場合の編集部のおすすめは、手帳におなかの具合を書き留めておくこと。ある製品を1か月続けて、手帳に「おなかの具合度数」を書いておきます。50点、90点など、なんとなくで構いません。毎日でなくとも構いません。

これを続けることで、自分にヨーグルトが合っているのか、どの製品がいいのか……がなんとなく見えてくるかもしれません。編集部員Yが実際に行っているこの方法、ぜひお試しください。

ひとことで乳酸菌と言っても、多くの種類があることは、科学する料理研究家・平松サリーさんの記事の通りです。乳酸菌やビフィズス菌について詳しくお知りになりたいかたは、下記記事をおすすめします。

ビフィズス菌は乳酸菌ではない!?食品の保存から発酵食品づくり、腸内改善まで大活躍の乳酸菌

【納豆】

納豆

納豆には、食物繊維が豊富に含まれています。納豆は、前述の通りプロバイオティクスとして善玉菌を含む食品であり、また食物繊維を多く含むことから、プレバイオティクスとしての働きもかね備えています。腸内環境をより良い状態にし、結果としてヒトの免疫にも好影響を与えてくれることが期待されています。

納豆100グラムあたりの食物繊維の量は、6.7グラム(よくある1パックは40〜50グラム程度)。

キャベツ100グラムだと1.8グラムなので、納豆はとても食物繊維を摂取しやすい食べ物だと言えるのではないでしょうか。(ちなみに、厚生労働省による1日の「目標量」は20グラム程度です)

納豆についてさらに知りたい方は、下記記事もどうぞ。「スーパーフード」たる所以をご紹介しています。

納豆(なっとう)|最強菌がつくるジャパニーズ・スーパーフード

おいしい麹納豆まとめ 栄養・レシピ 作り置きもう一品で食卓を豊かに

【甘酒】

甘酒

甘酒も注目の食材です。甘酒の甘みには、オリゴ糖が含まれています。オリゴ糖は前述の通りプレバイティクスとして、腸のなかの善玉菌を増やし、腸内環境を整えることに一役買ってくれています。

そのほかにも350以上の栄養成分を含んでいて、免疫力に総合的にバックアップする、と東京農業大学教授の前橋健二先生が解説しています。

砂糖の代わりに糀甘酒を使うという提案 -- Amazon

前橋先生の解説は、下記記事をご覧ください。

研究者から見た発酵食品の魅力・すごさとは?科学の目で見た発酵食品【第2回】

また、甘酒の作り方やレシピ、その他の健康効果なども、下記記事にまとめています。

米麹甘酒・糀甘酒の作り方、健康効果を知って、毎日おいしく健やかに+米麹甘酒を使ったレシピ

【お漬物 ぬか漬け、キムチ】

お漬物 ぬか漬け、キムチ

お漬物の多くは、乳酸菌による発酵をもとに作られています。ぬか床も、乳酸発酵が主になっています。つまりぬか漬けの野菜は、プロバイオティクスを含む食品の1つです。

キムチも乳酸発酵で、発酵食品の権威・小泉武夫さんによれば、ヨーグルトと匹敵する乳酸菌が生育しているそうです。

"本物のキムチ"がエライ理由 | 丸ごと小泉武夫 食マガジン

さらに、基本的に野菜類には食物繊維が含まれています。つまりプレバイオティクスでもあり、ぬか漬けにした野菜やキムチは腸内環境を整えるのにとても有用な食べ物だと言われています。

【テンペ】

テンペ

テンペは、インドネシアの伝統発酵素材。主原料は大豆で、「テンペ菌」と呼ばれる微生物で発酵させています。インドネシア版の納豆、とイメージすると分かりやすいでしょうか。編集部Sの周囲では、普通のスーパーで売っているのを見かけるようになりました。

腸・免疫という切り口で見ると、その特長はやはり食物繊維です。大豆が原材料なので、納豆と同じだけの食物繊維が含まれていることになります。つまり、プレバイオティクスであり、腸の状態を整えてくれる食べ物の1つです。

食べ方など、詳しくはこちらのページをどうぞ。抗酸化作用でエイジングケアにも効果的です。

テンペ|エイジングケアに注目の健康食品

【チーズ】

チーズ

チーズも主に乳酸発酵によって作られています。乳酸菌はプロバイオティクスであり、ヨーグルトなどと同じく腸を整えてくれる効果が期待できます。カルシウムなどの栄養素も豊富で、その点でも毎日とりたい食べ物の1つと言えそうです。

チーズに関しては、下記記事でさらに深く解説しています。

チーズ|乳の栄養をギュッと濃縮 奥深いチーズの世界

【味噌】

味噌

味噌は納豆と同じく、主に大豆から作られます。つまり食物繊維が豊富に含まれています。100グラム中4.9グラムと、キャベツなどの葉物野菜より多いです。この食物繊維が腸の状態を整え、結果として免疫力を上げてくれる効果が期待できます。

調味料ですのでそれほど多く食べることはないと思いますが、その他の栄養素も豊富ですので、味噌を味付けに使う料理を増やすことで、自然に食物繊維の摂取量を増やしながら、栄養価を上げることができそうです。

味噌に関して詳しく知りたい方には、こちらの記事がお勧めです。

手前味噌はなぜ美味しいのか?〜味噌の科学|発酵食品のカガクあれこれ【第5回】

その他の食品

【野菜】

野菜

発酵食品以外の食品にも注目しましょう。野菜は言うまでもなく、食物繊維が豊富です。増やしたい善玉菌を助けるプレバイオティクスとして、免疫力強化に一役買ってくれそうです。

食物繊維という点では、根菜類に多く含まれることがよく知られています。ゴボウは100グラムあたり5.7グラムと、大豆と同程度の食物繊維を含みます。ダイコンは水分が多く100グラムあたり1.4グラムとゴボウほど多くの食物繊維を含んでいませんが、煮物にすることで食べやすくなり、1度にたくさん食べられますので、結果として食物繊維を多くとることができます。また、切り干し大根はかなりの割合が食物繊維です。そのほか、にんじんやレンコン、かぼちゃも食物繊維が豊富です。

大豆以外の豆類も、大豆と同様に食物繊維が多く含まれています。えだ豆、いんげん豆、えんどう豆、あずきなどが日々の食事に取り入れやすいでしょうか。

葉物野菜にももちろん食物繊維が含まれています。ただ、水分も多いので、一般的にグラムあたりの食物繊維量を見ると、少し少なくなります。キャベツの場合は100グラムあたり1.8グラムとなっています。しかし一般的にキャベツ100グラムは葉3~4枚分であり、調理して工夫すれば、たくさん食べることができるので、結果として多く食物繊維をとることができるでしょう。

モロヘイヤは葉物野菜の中でも例外的に食物繊維が豊富です。100グラムあたり5.9グラムと、大豆に近い数字です。

【果物】

果物

腸の状態を整え、免疫力を上げるという観点からは、果物も食物繊維に注目です。

もちろん生の果物も良いと思いますが、ドライフルーツは水分が抜けて栄養素が凝縮されます。その結果グラムあたりの食物繊維が多くなり、手軽にプレバイオティクスをとることができると言えるでしょう。干しぶどうは100グラムあたり4.1グラム、干したあんずにいたっては9.8グラムも含まれています。

最近ではコンビニなどでもいろいろなドライフルーツが売られています。手軽なおやつでプレバイオティクスを実践してみてはいかがでしょうか。

【きのこ類、海藻】

きのこ類、海藻

その他、きのこ類や海藻も多くの食物繊維=プレバイオティクスを含みます。

やはりいろいろな食材をとることで、腸の状態が整い、そしてそれは免疫力強化にもいい、ということが言えそうです。

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参考文献

※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。

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