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インタビュー

「T.sweets.Labo」オーナーパティシエ 柘植孝之さんインタビュー クリスマスに食べたい「シュトーレン」、おいしさの秘密は“発酵”にあり?

2018.12.19

ドイツで昔から、クリスマスを待つ時期に食べられてきた伝統的な菓子パン「シュトーレン」も発酵食品の一つだって知っていますか? その特徴やおいしい食べ方について、和の発酵食品を取り入れたオリジナルシュトーレンで人気の「T. sweets. Labo」のオーナーパティシエ・柘植孝之さんに教えてもらいました。

柘植孝之(「T.sweets.Labo」オーナーパティシエ)

ホテルニューオータニに勤務後、約5年間にわたり、ベルギー、カナダ、オーストラリアなどのホテルやレストランでセクションチーフを務める。帰国後、外食企業のレストランでデセールを作る傍ら、新店の立ち上げやメニュー開発のサポートを行う。2010年に東京都大田区に「T. sweets. Labo」を設立。米粉や麹(こうじ)を使ったスイーツを販売しながら、スイーツのOEM生産や商品開発を手がける。

https://www.t-sweetslabo.jp/

シュトーレンはドイツ生まれの発酵食品

キリスト教ではクリスマスの4週間ほど前から「アドベント」と呼ばれる期間に入ります。ドイツやオランダなどにはその期間中、シュトーレンを毎日1切れずつ食べながらクリスマスを指折り数えて待つ風習があるそうです。

柘植さん「シュトーレンは、酵母菌やイーストで発酵させた菓子パンです。パン生地にはラム酒漬けドライフルーツやナッツを練り込み、『おくるみ型』と呼ばれる平べったい山形に成形します。焼き上げたパンを発酵バターに浸し、仕上げに粉砂糖を振り掛けるのが伝統的なシュトーレンです。

シュトーレンはしっかり焼いて水分を飛ばすため、長期保存ができます。日がたつごとに生地に洋酒漬けのドライフルーツやナッツの風味がなじんできて、味わいが変化するのもシュトーレンの魅力です」

甘酒&日本酒がシュトーレンとコラボ!

日本では5〜6年前からシュトーレンがブームに。本場ドイツ風のものから、有名ブーランジェリーやパティシエが手がけるものなど、さまざまなシュトーレンを見かけるようになりました。最近ではクリスマスが近づくと、手土産やホームパーティーのデザートにシュトーレンを用意したり、そこかしこでシュトーレン食べ比べ会が開催されたりと人気はますます高まっている様子。

柘植さんのブランド「T. sweets. Labo」では、5年前からオリジナルのシュトーレンを作っています。その最大の特徴は、生地に自然栽培のお米を粗挽びきした米粉だけを使うこと。生地は発酵させませんが、味の決め手として日本を代表する発酵食品「甘酒」と「日本酒」を使っています。

自然栽培のお米を粗挽きにした米粉100%の生地はざっくりと素朴な食感。かみしめると、お米ならではの優しい甘さとともに、ドライフルーツのうま味やナッツの香ばしさが一体となって味わえます。この味のまとめ役となっているのが甘酒です。

柘植さん「甘酒も日本酒もお米から作られていますから、米粉で作る僕のシュトーレンと相性が抜群にいいんですよ。
日本酒は、自然米だけで仕込んだ純米酒。このお酒には、素材と発酵の力が生み出したアミノ酸が一般的な料理酒の8倍も含まれています。だから、シュトーレンにたっぷりと使い、うま味と奥深さを加えるんです。
甘味づけの主役はもち米を麹菌で発酵させた甘酒です。うちで使う甘酒はまろやかで力強い甘さが特徴。砂糖なしでも十分に甘く、しかも柔らかで上品な甘味が出せます。また、甘酒は全体のまとめ役としても働きます。甘酒が入ると、素材それぞれの持ち味を生かしながら、不思議なくらいの一体感が生まれます」

和のシュトーレンを支える発酵食品のチカラ

ところで、お菓子作りによく使用されるバニラビーンズも発酵食品だとご存知でしたか? バニラは、熱帯で生育するラン科のつる植物。10〜25cmの細長いさやに入っている種がバニラビーンズです。
収穫されたばかりの生のバニラにはまったく香りがありませんが、さっと湯がいた後に湿度を保ったまま発酵させ、さらに天日干ししながらゆっくり発酵を進めると、独特の甘い香りのもととなる「バニリン」という成分が生成されます。「T. sweets. Labo」のシュトーレンにも天然バニラが使われていました。

左上から、甘酒、純米酒、日本のかんきつ類「文旦(ぶんたん)」と、キウイフルーツに似たつる植物の「サルナシ」の自家製ドライフルーツ。左手前からバニラビーンズ、塩、発酵バター、白あん。「塩をほんの少し加えると、味が引き締まってバランスがよくなります。白あんはコクを出すだけでなく生地のつなぎとしても働きます」(柘植さん)

こうした素材とともに、自家製ドライフルーツ、和栗などのナッツ類を混ぜ合わせると、“漬け床”が完成。それを2日間ほど冷蔵庫で熟成させると、柘植さん自身が「おたまですくって食べたくなる(笑)」と言うほど、単に甘いだけではない、奥深いうま味や香りが醸し出されます。

この漬け床に米粉と米油を加えて焼き締めたシュトーレンは、水分が抜け切ってパサパサの状態。ここで活躍するのがグラスフェッドの牛乳から作られた発酵バターです。

柘植さん「大きなボウルに発酵バターを溶かして、そこに素焼きのシュトーレンをドボンと浸けて、バターをたっぷり吸わせます。そうすることでバターの香りをまとい、生地がしっとりするんです。発酵バターは温めると、『本当においしくなるのかな?』と一抹の不安がよぎるくらい、強烈な臭いがします(笑)。でも、食べるときにはそれが食欲をそそるバターの香りに変わってしまう。これも発酵食品の不思議の一つかもしれませんね」

※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。

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