“発酵王子“ 伏木暢顕(ふしきのぶあき)
1975年東京生まれ。醸造料理人であり、日本の発酵食文化伝承人。発酵教室の講師としても活躍し、現在の「発酵食」、「麹」人気の立役者の一人。イタリアン、和食など料理の道を極めること20余年、食材を全く別のものにかえてしまう、不思議な麹の力に惚れ込み、独学で麹について学ぶ。メディア出演も豊富で、「発酵王子」として親しまれている。
食べ物を美味しくする発酵は 体にもやさしい
微生物による働きで、食材が美味しく変化する発酵。その過程では、微生物が食材を分解し、分子をどんどん小さくしていきます。本来は、自分自身の体の中で酵素を出して分解しなければならないものを、先に微生物が分解しておいてくれるわけですから、発酵食以外の食品と比べて、消化吸収はスムーズ。発酵食は、酵素を生み出す膵臓や、消化吸収を行う胃や腸にも負担をかけにくい、体にやさしい食品といえます。
発酵がもたらす体へのメリット
例えば、大豆が発酵によって納豆になるときには、納豆独特の酵素が生まれます。これはナットウキナーゼというもので、血栓を溶解して血流を良くしてくれる効果があるとも言われています。
また、米・麦・大豆などが微生物により分解されて味噌になる過程では、オリゴ糖や質の良い食物繊維が生まれます。これらは、私たちの体内に入ると腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えると言われています。腸は万病の元と呼ばれる臓器です。発酵食を食べて腸が元気になることで、気持ちまでラクになったとか、不安感が消えたとおっしゃる方も多いんです。
このように発酵食品には、体に良いと言われているものがさまざま含まれています。発酵熟成という段階を経て生まれたこれらの成分は、非常に質がよく吸収率も高いのが特長です。代謝をアップさせるといわれるビタミンB群に至っては、吸収率はなんと90%以上とも言われています。古くから発酵食を食べ続けてきた日本人は、発酵が生み出す質の良い成分を効率よく上手に体に取り入れてきたのだと思います。
発酵物を食べ続けてヘルシーに
私は全国各地で発酵教室を開いていますが、今でも発酵文化が非常に根強く残っている地域の方々は、特に代謝がすごく良いように思います。太りにくく、3歩歩いたら汗かくような感じで(笑)。みなさん子どものころから、発酵食を当たり前のように食べていらっしゃるので、その食生活が生み出す健康美なのではないかと考えています。
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。