“発酵王子“ 伏木暢顕(ふしきのぶあき)
1975年東京生まれ。醸造料理人であり、日本の発酵食文化伝承人。発酵教室の講師としても活躍し、現在の「発酵食」、「麹」人気の立役者の一人。イタリアン、和食など料理の道を極めること20余年、食材を全く別のものにかえてしまう、不思議な麹の力に惚れ込み、独学で麹について学ぶ。メディア出演も豊富で、「発酵王子」として親しまれている。
発酵にほれ込んだきっかけは 麹からつくった甘酒
知り合いに味噌蔵の息子さんがいて、彼から「自分のじいさんが作った麹は日本一だから、麹の味が一番出る甘酒をなめてみてくれ」と言われたのが最初です。子どものころに酒粕の甘酒を飲んだことがあり、アルコールの匂いがきつくてあまりいい印象はなかったんです。それで、はじめは拒否していましたが、あまりにしつこいのでなめてみたところ、「これは、鮭を漬けたらおいしいだろうな」とピンときました。10代のころから料理の世界にいるため、どの素材を何に漬けるとどういう味になるかの想像はだいたいつきます。でも、実際に鮭を甘酒に漬けてみたら、想像をはるかに超えていました。自然な甘味と旨味、油がネットリするなんともいえない感じで…。それらすべてを生み出す、目に見えない微生物の発酵パワーに、一気に引き込まれていきました。
発酵によって生まれる美味しさと栄養価
発酵による食材の変化は、微生物が繁殖することによって生まれる味や、食材が分解されて、体に影響力のある良い成分が新たに生み出されることが理由です。発酵が進むと、タンパク質からはアミノ酸が、でんぷんからはブドウ糖が生まれます。これらは、微生物がつくりだす天然の旨味や甘味ですし、体に良い質の高い栄養価ということもできます。
自宅で発酵食を取り入れるなら「醤油ぬか」を
発酵に興味を持たれて、ご家庭でも発酵食をつくってみたい方には、「醤油ぬか」がおすすめです。ぬか床というと塩水でつくるという固定概念があると思いますが、塩分と水分さえあれば何でも大丈夫です。生ぬかよりも失敗しにくいいりぬかを選び、醤油、水、そして大量の山椒を入れるのがポイントです。実はこの「醤油ぬか」、私も自宅でつくっています。野菜を漬けても美味しいですが、なんと言っても魚がうまい。アジの干物のような一般的な魚が、劇的に美味しくなりますよ。
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。