老化現象の大きな原因となる活性酸素
前回は、「腸と老化」の関係について取り上げましたが、老化現象について考える時に、その大きな原因として「体の酸化」を無視することはできません。人は酸素がないと生きていけませんが、体内に取り込まれた酸素の一部が活性酸素となって、体の組織を構成する細胞を酸化させてしまうと言われています。また、紫外線や大気汚染、ストレスや過度な運動などもこの活性酸素を増加させる一因と考えられています。
長い年月をかけて体が酸化していくことで、肌の老化や白内障、動脈硬化、心筋梗塞や脳血管障害、さらにがんの原因になるなど、体のさまざまなところで不具合が生じてきます。だから、活性酸素の発生はできるだけ避けたいのですが、実際には生理現象や日常生活にともなって生じますので、それをゼロにすることは不可能です。また、私たちの体には、SOD(Super Oxide Dismutase)という、活性酸素を取り除く酵素がありますが、その産生力は年齢とともに低下してしまいます。
老化予防の鍵を握る「体を酸化させない食べ方」
そこで、重要となるのが食事内容です。「体の酸化」を抑え、老化現象を遅らせるためには、「抗酸化物質」を摂ると良いと言われています。では、どのようにして摂ればよいのでしょうか。そのポイントをまとめると以下の通りです。
「体を酸化させない食べ方」のポイント
- エキストラバージン・オリーブオイルを積極的に使う(オレイン酸、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質が豊富)
- 穀物を毎日摂る(食物繊維が豊富)
- 野菜や果物を毎日摂る(ビタミン類、ファイトケミカル、食物繊維が豊富)
- 魚類を食べる(EPA、DHAが摂れる)
- 赤身肉を月に数回摂る
- 乳製品、ヨーグルト(低~無脂肪)を1日1回少量摂る
- 植物性の発酵食品を毎日摂る(植物性乳酸菌、食物繊維が摂れる)
このような、「体を酸化させない食べ方」として最適なのが、「地中海型の和食」です。 地中海式食生活は、オリーブオイルをふんだんに使い、パンやパスタなどの穀物由来の主食と魚・野菜料理を中心とし、果物を豊富に食べ、肉類や乳製品が少なく、デザートを除いて砂糖を使用しないという特徴があります。一方、和食では、味噌や醤油、納豆、漬物などの植物由来の発酵食品が多く、それらに含まれる植物性乳酸菌や食物繊維、オリゴ糖などが腸内フローラの改善に役立ちます。ただし、砂糖や塩が多くなりがちという欠点もあります。
誰でも簡単、「地中海型の和食」の実践方法
このような地中海式食生活と和食の長所を生かし、欠点を補うのが「地中海型の和食」です。具体的なメニューとしては、魚介類や野菜を使用した主菜や植物性発酵食品の副菜などで構成した一汁三菜の和食をベースに、油を使う時はエキストラバージン・オイルに、また、砂糖はオリゴ糖に変えるというとてもシンプルなものです。 マグロのお刺身にエキストラバージン・オイルをかけるというと、ちょっと驚く方もいるかもしれませんが、これは地中海料理ではカルパッチョというお馴染みのメニューです。意外に思うかもしれませんが、納豆といった植物由来の発酵食品や豆腐にもエキストラバージン・オイルは非常によく合います。食欲の秋を迎え、魚も野菜もますますおいしくなるシーズンになったのを機に、誰にでも簡単に実践できる「地中海型の和食」を、ぜひ、日頃の食生活に取り入れてみてください。
松生恒夫(松生クリニック院長 医学博士)
1955年東京都生まれ。医学博士、日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。80年東京慈恵会医科大学を卒業後、83年同大学第三病院内科助手、94年松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年松生クリニックを開業。便秘外来を設け、地中海式食生活や漢方療法なども診療に取り入れ効果をあげ、全国から患者が訪れるクリニックとしても知られている。“腸のスペシャリスト”として、数多くのテレビ番組に出演するなどメディアでも活躍中。『腸に悪い14の習慣-「これ」をやめれば腸が若返る』(PHP研究所)、『朝の腸内リセットがカラダを変える』(主婦の友社)、『漬物を食べないと腸が病気になります』(廣済堂出版)、など腸に関する著書も多数。
書籍の紹介
老いない人は何を食べているか
松生恒夫(著)
定価:本体価格 780円+税
ISBN:9784582858549
判型/頁数新書 203ページ
2017年9月19日発行
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。