今年は“腸の秋バテ”に要注意!
今年は、夏から秋にかけて、全国的に天候不順な日が続いています。東京を例にとれば、9月の真夏日(30℃以上の日)が、昨年は11日だったのに対し今年は3日しかありませんでした。今年は、残暑を感じる日が少なかったんですね。
それでいて東京の9月の1日の中での最高気温と最低気温の差をみると、10℃以上あった日が3日、8~9℃だった日が11日もあります。すごく暑いわけでもないのに夏服を着て、1日の中での気温差も大きくて、体温調節が難しい日が続いていたといえましょう。
このように、体温調節が難しいと、その分体がストレスを感じて疲れます。そんなときは、腸も同様に疲れています。この時期の、しつこい疲れや何となくけだるいなどの倦怠感を感じる人は、“腸の秋バテ”が原因かもしれません。実際に私のクリニックでも、ここに来て腸の不調を訴える患者さんが増えてきています。
しかも、特に気温差は、腸にとっては良くありません。私は、「気温差10℃の法則」といっていますが、1日の中での気温差だけでなく、急に寒さを感じる日が多くなるこれからのシーズンも“腸の秋バテ”が続く可能性が高いとみてよいでしょう。
腸内環境が悪化することで起こるさまざまな弊害
腸は“冷え”に非常に敏感な器官です。腸が冷えると動きが鈍くなり、排便がスムーズに行われにくくなります。そうなると腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪化してしまうことは、最近ではよく知られるようになってきました。
腸内環境が悪化すると、腐敗物やそこから発生するガスがお腹にたまり、便秘や体臭、肌荒れの原因になったり、大腸がんのリスクを高めたりします。また、「脳腸相関」と呼ばれるほど脳と腸は密接に関係があり、腸の不調が気力低下やうつなどの精神状態とも関係していると考えられるようになってきています。
“腸の秋バテ”対策として植物由来発酵食品の摂取を
“腸の秋バテ”やそれによってもたらされる腸内環境の悪化を予防するためには、日ごろの食事を見直していくことが重要です。
腸にとって乳酸菌は好ましいものですが、その乳酸菌には、“動物性”のものと“植物性”のものがあるのは、まだ意外に認知されていません。“動物性乳酸菌”は、ヨーグルトやチーズなどの動物由来の発酵食品に含まれるのに対し、“植物性乳酸菌”は漬物や納豆、味噌、しょう油などの植物由来の発酵食品に含まれています。
そして、私は、現代人はこの“植物性乳酸菌”をもっと多く摂るようにした方がよいと考えています。なぜなら、食の欧米化にともない“植物性乳酸菌”の摂取量は減少し、逆に難病に指定されている潰瘍性大腸炎や大腸がんが増加しているからです。
まずは、今日から手軽にできる“腸の秋バテ”対策として、漬物や納豆などの“植物性乳酸菌”を1日1品、食事に加えることをお薦めしたいと思います。
松生恒夫(松生クリニック院長 医学博士)
1955年東京都生まれ。医学博士、日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。80年東京慈恵会医科大学を卒業後、83年同大学第三病院内科助手、94年松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年松生クリニックを開業。便秘外来を設け、地中海式食生活や漢方療法なども診療に取り入れ効果をあげ、全国から患者が訪れるクリニックとしても知られている。“腸のスペシャリスト”として、数多くのテレビ番組に出演するなどメディアでも活躍中。『腸に悪い14の習慣-「これ」をやめれば腸が若返る』(PHP研究所)、『朝の腸内リセットがカラダを変える』(主婦の友社)、『漬物を食べないと腸が病気になります』(廣済堂出版)、など腸に関する著書も多数。
書籍の紹介
漬物を食べないと腸が病気になります 植物性乳酸菌が腸の免疫力を上げる
松生恒夫(著)
定価:本体価格 850円+税
ISBN:9784331520550
判型/頁数新書 204ページ
2016年8月30日発行
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。