プロ棋士 都成竜馬さんインタビュー【第5回】
知られざる棋士たちのプライベート
都成竜馬(プロ棋士)
空前の将棋ブームで将棋ファンの裾野がぐっと広がった昨今。盤上の戦いだけではなく、「将棋めし」と呼ばれる、対局中の出前で何を頼むかというような、棋士の「食」までもが注目を集めています。
棋士は、普段何を食べて、熾烈な戦いの場に臨んでいるのでしょう。彼らの「食」にこそ、強い集中力や鋭い判断力の秘訣が隠れているかもしれません。
気鋭のプロ棋士・都成竜馬さんに、4回にわたって「食」にまつわるお話を伺ってきたインタビューの最終回は、運動や趣味、休日の過ごし方など、棋士たちのプライベートに迫ります!
都成竜馬(棋士)
となり りゅうま
1990年宮崎県生まれ。プロ棋士。2013年に奨励会員として初の新人王戦優勝という快挙を遂げ、2016年にプロ棋士としてデビュー。2018年の竜王戦決勝トーナメントで藤井聡太七段との対局でも注目を浴びた、関西将棋界を背負って立つ気鋭棋士。実家は牛乳・乳製品などの製造・販売を営む「白水舎乳業」。
長い対局を乗り越えるコツ
長い対局になると十数時間にもわたるプロ棋士たちの戦い。その間ずっと将棋盤を挟んで座り、脳をフル回転させ続けるのは、想像を絶する過酷さです。対局が終わっても疲労ですぐに立ち上がれない棋士も時々いるのだとか。
「自分は集中力が切れて負けてしまった経験が多いので、集中力維持が目下の課題です。でも棋士って、対局中に常に将棋のことだけを考えているわけではないんですよ」
将棋とは無関係なことを考え、脳や体を休ませる時間もまた必要だと言います。
「相手が考えている間もずっと、次の手を考えて待っていては、とても十数時間は戦えません。いざという時に集中できるようにするためには、目の前の将棋盤から意識を離す時間を持つことも必要だと自分は思います。将棋とは無関係なこと、それこそ『お昼は何食べよう?』とかも考えていますよ。
タイトル戦の対局は長いと2日かけて行ったりするので、そのような緩急は、より重要だと思います。以前、インタビュー記事で拝見したんですが、ファッションが好きな佐藤天彦名人は、対局中に洋服の組み合わせを考えていたりもするそうです。えっ、意外ですか? 人それぞれですが、棋士はみんな意図的に集中力のコントロールをしているように思います。……藤井聡太七段は、ずっと将棋のことを考えていそうな気がするけど(笑)」
体力と集中力に加えて、ペース配分が大事。棋士はアスリートに近いのかもしれません。
棋士は意外に体育会系?!
「将棋はマラソンに喩えられることもありますし、実際、マラソン好きな棋士はとても多いんですよ」
都成さん自身、最近は食生活を見直すとともに、何か運動を始めようと考えているところ。
「昔の棋士は無頼派のイメージもあったかもしれませんが、今や大多数の棋士は将棋のために何かしらの運動をしています。体力づくりを目的に走り始めて、そのまま夢中になって、マラソン大会に出るようになった棋士がまわりに何人もいます。ただ、自分はなかなか続けられなくて、あまり向いていないのかもしれませんね」
将棋は、自分にとって日常そのもの
将棋を忘れて没頭するような趣味は何かあるんでしょうか?
「趣味についてよく質問されるんですけど……いまだ模索中です。子どもの頃からずっと将棋が趣味のようなものだったので、他にこれといった趣味がなくて。だからオンとオフに境目がないというか、むしろ信号待ちなどのふとした時にも将棋のことを考えていたりするので、自分にとって将棋は、仕事でも趣味でもなく、日常そのものという気がします」
インドア派で、休日は家で漫画を読んだりしてのんびり過ごすのが好きだと言います。
「将棋を題材にした漫画はつい読んじゃいますね。知っている世界だからこそわかるところも多いし、他の棋士の方がどういう感じなのかも気になりますし。羽海野チカさんの『3月のライオン』は棋士の人間性がリアルに描かれていて、共感できる部分が多いです」
人間関係でも棋士仲間や将棋関係の付き合いが多いので、プライベートな時間にも将棋は自然と溶け込んでいるようです。
「仲間うちで飲んでいる時に、突然『あの時、別の手を指していたらどうなったか?』と将棋の話が始まることはよくあります。休まる暇がない? でも、将棋の話をしているときが一番盛り上がっているかもしれません。やっぱり将棋が好きなんです」
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5回にわたって、気鋭棋士の「食」を中心としたお話をお届けしました。 盤上の戦いはもちろん、棋士の方々の個性や人間味も含めて、魅力的な将棋の世界。 ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。
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