空前の将棋ブームで将棋ファンの裾野がぐっと広がった昨今。盤上の戦いだけではなく、「将棋めし」と呼ばれる、対局中の出前で何を頼むかというような、棋士の「食」までもが注目を集めています。
棋士は、普段何を食べて、熾烈な戦いの場に臨んでいるのでしょう。彼らの「食」にこそ、強い集中力や鋭い判断力の秘訣が隠れているかもしれません。
気鋭のプロ棋士・都成竜馬さんは、対局を控えた朝、そして熾烈な戦いを終えた夜に、どのような食事をしているんでしょう?
都成竜馬(棋士)
となり りゅうま
1990年宮崎県生まれ。プロ棋士。2013年に奨励会員として初の新人王戦優勝という快挙を遂げ、2016年にプロ棋士としてデビュー。2018年の竜王戦決勝トーナメントで藤井聡太七段との対局でも注目を浴びた、関西将棋界を背負って立つ気鋭棋士。実家は牛乳・乳製品などの製造・販売を営む「白水舎乳業」。
朝は手軽に食べられる乳製品を
対局序盤から万全の態勢で戦うためには、朝起きてからの過ごし方、特に朝食が重要です。対局中には昼食や夕食、途中で自由にチョコレートなどを食べることができるとはいえ、朝食はその日の集中力に大きく影響してきます。
「そうはいっても、朝食をしっかりとる習慣がなかったので、食べずに対局に臨むことも多いんですが、先日、師匠である谷川浩司九段から『朝ごはんは食べたほうが良いよ』とアドバイスをいただきまして、それ以来、サッと食べられるヨーグルトや、実家から送られてくる『百白糀(ひゃくびゃくこうじ)』という甘酒乳飲料を飲んで出かけるように意識しています」
その手には、谷川九段による「心想事成(しんそうじせい)」の文字が書かれた扇子。
奨励会時代から叱咤激励して育ててくれた師匠の言葉はやはり大きいもの。棋士としての健康を改めて強く意識するようになったそうです。
ちなみに、師匠の直筆で「心に想う事は成る」という中国故事が書かれたこの扇子は、都成さんにとっての勝負扇子。大事な一局には欠かせない心強いアイテムです。
お酒に身を委ねる夜を越えて、強くなる
プロデビュー直後は、この勝負扇子の他にも「勝負ネクタイ」など験担ぎアイテムがあった都成さんですが、今ではニュートラルな状態で対局に臨むようになったと語ります。
「それで負けてしまったら、縁起を気にして使えなくなっちゃうじゃないですか。棋士は負けることだってありますから」
勝負師には聞きにくい、負けの話。
都成さんは、負けた日の夜はどうしているんですか?
「お酒が好きなのでほぼ毎日寝る前に軽く飲んでいますが、負けた日の夜は特に眠れないことが多いので、お酒の力を借りることが多いです。昔から気分転換が苦手で、気持ちを引きずってしまうタイプなんです。
勝った日は気分がハイになっているので、帰宅してからも夜遅くまで将棋の勉強をしたりしています。でも負けたときは、無理に前向きになったりせずに、ビールにキムチ、ウイスキーにチョコレートなどを合わせて、お酒に身を委ねて過ごします」
負けを乗り越えてこそ、強くなる。
そんな棋士の姿を垣間見たような気がしました。
-----
シリアスなイメージが強い将棋界ですが、舞台裏には人間味あふれた面白い話が満載!
次回は棋士たちのプライベートに迫ります。
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。