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インタビュー

All About「子育て」ガイド 斎藤 貴美子さんインタビュー

子育て&人間関係のヒントは、発酵に!?【後編】

斎藤 貴美子(All About「子育て」ガイド)

人が手を入れるから、発酵がうまくゆく

子どもたち

前半で親子関係を日本酒づくりに例えると、微生物は子どもで、日本酒をつくる蔵人は親だと書きました。後半はその意味と良い発酵のカタチを人間関係に応用して考えます。

子育てと発酵……ちょっと無理やりでは!?と思った方、共通点をご覧ください。

  • 手を出す前に、観察する。
  • 子ども(微生物)が過ごす環境を良くしてあげる。
  • 放っておくだけではいい関係(成果)は生まれない。

けっこう似ていたりしませんか?

手を出す前に観察し、環境を整える

昔ながらの日本酒づくりで味の決め手となるのは、材料の米、水、そして杜氏(とうじ)をはじめ蔵人の経験と勘です。この経験と勘を言い換えると、目に見えない微生物との対話です。しゃべらない麹(こうじ)菌や酵母の働きをじっくり見て、触って、聞いて確かめる。五感を使って観察し、アクションすることが求められるのです。

赤ちゃんと母親

この状況、赤ちゃんのケアをとそっくりなのです。赤ちゃんが泣いたら、ミルクかな?オムツかな?さみしいのかな?と様子を伺い、経験と勘で対処しますよね。生まれたての赤ちゃんを安全な場所で健康に育てるため、感性を研ぎ澄ませるのではないでしょうか。

そして赤ちゃんが成長して歩き、しゃべるようになると興味の幅は広がります。「あれはなぜ?これはなぜ?」が止まらなくなる頃、親はその好奇心を刺激するような環境を、意識的/無意識に整えているものです。電車が好きな子は電車が見えるところに連れて行き、お料理に興味のある子とは一緒にごはんを作る。興味を伸ばす状況を作ってあげているのです。

こうして蔵人も微生物の働きを観察しながら、より働きやすい温度、湿度、ノルマを整え、手をかけておいしい酒づくりにまい進するのです。

放置しても一応お酒にはなる!?

では、手をかけずに日本酒は作れないのでしょうか?
元祖日本酒の作り方のひとつに「口嚼ノ酒(くちかみのさけ)」というのがあります。これは奈良時代にまとめられた「風土記」に記述されているもので、作り方はとてもワイルド。蒸した米を口に入れ噛み砕いたあと、器に吐き出してしばし待つ、というものです。

人間の唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれていて、お米のでんぷん質を糖質へと変える働きがあります。糖質となったお米へ、空気中にふわふわしている野生酵母がくっつくと、酵母が糖質をアルコールへ変え、日本酒ができる、というものです。

なるほど、人の神秘と知恵はすごい!あまり手がかからない!と感嘆してしまいますが、それを飲みたいかと言われれば……いかがでしょうか。

赤ちゃんと母親

言わずもがな、子どもは放置しすぎると心に傷を負ってしまいます。なんでも親が先回りして手を出してしまうのも考え物ですが、まずは「目」をかけること。「ねえ、見て見て~」と子どもが言えば、それを見てあげて感想をひとこと。これで子どもの安心感は格段に増すと思います。

だが、作り手の苦しみとは関係ない

蔵人は時に厳寒の水で米を洗ったり、寝ずに丸2日間、麹につきっきりになったりと苛酷な肉体労働を要求されます。では蔵人が苦しむほどいい酒ができるかといえば、それは別の話です。

近年、日本酒の代表銘柄となったとある酒造会社は、昔ながらの杜氏制を廃し、米の栽培や醸造の行程をIT化しています。日本酒を作る緊張感は消えないといいますが、既存の酒造りにとらわれないやり方で国内外に多くのファンを獲得しています。

母子と女性

子育てをめぐる風潮には、母親の自己犠牲が求められて美談となりますが、私は昔ながらの母性神話を廃し、父親が育児の半分を担当したり、子育ての一部をアウトソースしたりしても、子どもはよく成長すると思っています。

発酵のルールを人間関係に応用してみる

さて、最後に発酵のノウハウをママ友関係、職場関係の集団に応用したらどうなるでしょうか。この場合、微生物はあなたを含む複数の人間で、蔵人を仮にボスママや上司とします。

ある日、ある微生物が悪口を言い出しました。最初は軽い愚痴だったのが、日に日に本気の悪口大会に……。このままいくと、この集団は腐敗していくでしょう。

腕の良い蔵人だったら先を読んで動きます。が、いつまでも動く気配がなかったら、まずは観察。悪口を言いふらす元、腐敗の元が分かったら、ゴッソリ切り捨てる……とはいきませんので、距離を置いて自分が腐敗しないよう気を付けます。ストレスや悪意は伝染するので、それをできるだけ家の中に持ち込まない。持ち込んでしまったら、自分の好きなことをして毒を消します。

母子たち

すると不思議なもので、少しずつ気の合う人が回りに集まってきます。実は悪口にへきえきしていた人もいました。あなたは、相手が喜びそうなことをしてあげます。すると同じことが返ってきて、一緒にいると気持ちが楽になる発酵した場になってきました。これぞ、おいしい関係!

おいしい関係は、一朝一夕で成り立つものではありませんが、発酵のルールを頭の片隅に置いておくと、親子関係や人間関係を俯瞰(ふかん)することに役立つと思いますが、いかがでしょうか。

斎藤 貴美子

All About「子育て」ガイド。美容・健康、ファッション、日本酒が得意なコピーライター/ディレクター。出産後、ママ友の悩みや子育て系NPO団体などへの取材から、現代の育児問題を認識。まずは現状を知ってもらうべく、ママ系サイトでコラムを執筆しつつ母親が楽しく生きられる育児サバイバル術を模索中。

※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。

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