古代から続く日本の発酵文化
世界各地で古くから愛されてきた発酵食品の数々。
日本では縄文時代にはアワやヒエ、ドングリを原料とした原始的な発酵食品づくりがすでに行われていたとか。記録として日本に発酵食品が初めて登場したのは奈良時代。平安時代中期になると、酢漬けや粕漬けなどさまざまな漬物がつくられていたようです。
発酵のメカニズムが解明されたのは17世紀に入ってからのこと。微生物の存在や複雑なメカニズムなど知らなくても、人類は経験と探究心によって、発酵の技術を身につけ、豊かな食文化を育んでいったのです。
「発酵食品の宝庫・日本」、その理由は?
日本は、納豆や漬物をはじめ、くさや(東京都)、ふなずし(滋賀県)など各地の郷土食に発酵食品を有する「発酵食品の宝庫」ともいわれています。
そのわけは、温暖湿潤な気候にあります。湿気の多い日本はカビが発生しやすい環境にありますが、麹菌のような安全で有用なカビの繁殖(=発酵)が進みやすい環境ともいえるのです。
カビの多くは有害ですが、その中から麹菌のような、毒をつくらない有用な菌を選別して育てて、しょうゆ、味噌、日本酒など、多彩な発酵食品を生み出し、世界でも有数の「発酵食品の宝庫」へと発展していきました。
麹菌がもたらす、日本独自の味
「安全で有用なカビ」の典型といえる麹菌は、日本を代表する「国菌」にも認定されています。和食に欠かせない「日本の味」の根幹ともいえる、味噌、しょうゆ、みりん、酢などの調味料や日本酒などの発酵食品は「麹」によってつくられています。
「麹」とは、蒸した米や麦、大豆などの穀物に麹菌を加えて繁殖させた加工品のこと。米からできた米麹や、大豆からできた豆麹、麦からできた麦麹などがよく知られています。数年前よりブームとなった塩麹や甘酒も、麹によってつくられています。
アジア各国にもカビを用いた発酵食品はありますが、とりわけ日本に麹菌を用いた発酵食品が豊富なのは、麹菌が生息できる適度な温度と湿度を持つ風土だからこそ。
ちなみに、「こうじ」を表す漢字は「麹」と「糀」の2種類があります。「麹」は、米・麦・大豆などでつくられるこうじ全般を表し、「糀」は、米麹のみを表します。これは、蒸し米の表面を白くてふわふわした菌糸が覆う様子が花のようであるから、ということに由来しているようです。
麹菌は日本の食文化を支える「縁の下の力持ち」
麹菌には、肉をやわらかくする酵素「プロテアーゼ」、食材のうまみを引き出す酵素「アミラーゼ」など、料理をおいしくする多くの酵素が含まれています。
さらに、これらの酵素は消化を助け、麹菌に含まれる栄養素・必須アミノ酸やビタミンB群は代謝を促進するといわれ、麹菌は健康にも役立つ心強い味方なのです。
また、麹によって作られた発酵食品は貯蔵性が高く、保存食としても重宝されてきました。味噌や焼酎などのように、熟成が進行することで、おいしさが増すという特長も持っています。化学調味料や合成保存料などなかった時代、先人たちは上手に麹菌を利用していたのです。
おいしい料理のもと、健康のもととして、長い歴史を経て受け継がれてきた麹菌。まさに、日本の食文化を支える「縁の下の力持ち」といえるでしょう。
※記載内容は特定の商品または発酵食品についての効果効能を保証するものではありません。