世の中に発酵食品は数多くありますが、日本の各家庭の冷蔵庫に常備されている率が飛び抜けて高いもののひとつが、味噌(みそ)ではないでしょうか。
多くの日本人にとって大変身近な食品であると同時に数々の優れた特徴を持つ味噌は、発酵食品をなかなか取れないとお悩みの方にとって頼もしい存在であると言えます。
味噌は間口の広い発酵食品
発酵食品の中でも味噌は、日本におけるその裾野の広さ、使用頻度の高さにおいて抜きん出ていると言えるのではないでしょうか。
同じ発酵食品でも、お酒は飲まない人がいますし、お酢は酸っぱいのが苦手な人もいます。漬物は好みが分かれるところでしょうし、地域性もある納豆は日本全国どこの家庭でも日常的に食べられているというものではありません。
その点、味噌は和食における基本食材。口にしないという人は極めて限られ、自炊を一切しないというケースを除けば大半の家庭に常備されていると考えられます。
さらに、その汎用性の高さ(汁にもなる、調味料としても使える、なめ味噌のようにそれ自体をそのまま味わえる)は他の追随を許しません。普及率と使用頻度では互角の醤油(しょうゆ)も、汎用性の点では味噌が優位ではないでしょうか?味噌は極めて間口の広い発酵食品であると言えるでしょう。
発酵の力。「大豆と塩」から「味噌」へ
味噌は栄養面でも優等生。とはいえ、その主原料となる大豆は栄養面では優れていても、消化吸収の面では残念ながらあまりよい方ではありません。
そんな大豆の泣き所をクリアしたのが味噌です。製造過程で酵素により分解され、消化吸収効率が格段によくなったタンパク質を豊富に含んでいるため、少量でも効率よくタンパク質を摂取することができるのです。
発酵と熟成という手間をかけることで、もはやただの「大豆と塩」ではなくなり、味わいだけでなく栄養摂取効率も大幅に引き上げられた発酵食品としての「味噌」に生まれ変わります。
味噌は塩分の気にならない発酵食品って本当?
味噌の栄養面での利点はよく分かっていても、塩分が気になるという人も少なくないかもしれません。しかし、そもそも味噌は一度に大量に食べる類いの食品ではないこともあり、気にし過ぎる必要はないと考えられています。
むしろ味噌には血圧の上昇を抑制して、脳卒中を予防するような効果があるという研究結果も発表されているほどです。(広島大学・広島大学院の研究グループ)
それでもやはり塩分が気になってしまうようであれば、味噌汁は毎食ではなく1日に1杯として、取り過ぎに注意する、塩分を排出する作用のあるカリウムを多く含む食品(緑黄色野菜・芋・海藻類など)を味噌汁の具にするなどの工夫を取り入れるのがお勧めです。
基本的に熟成期間の長い味噌は劣化防止のための塩が多めに使われていることから辛口となり、また、長く熟成するほど濃い茶褐色へと変化していきますので(江戸甘味噌や東海地方の豆味噌のように、色の濃さと塩分含有率が比例しない例外もあります)、色が淡めの甘口味噌を選ぶようにするのもよいでしょう。
発酵大国ならではの味噌の楽しみ
「手前味噌」という言葉があるように、味噌はかつて家庭ごとに作るものであり、従って地域ごとに異なる特色を持つ味噌が作られていました。逆に言えば、遠く離れた地域で作られている味噌を味わう機会は通常なかったということです。
しかし、今や日本各地のさまざまな味わいの味噌が簡単に手に入る時代。色合いも風味も異なれば、塩気も甘口から辛口までとりどりですので、味噌汁を日替わりにするのも楽しいかもしれませんね。日頃の食卓にバラエティー豊かな味噌を気軽に取り入れて、味噌という日本の誇る発酵食品の奥深い世界に触れてみてはいかがでしょう。
※記載内容は、筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効能を保証するものではありません。