ぬか漬けと言えば、くさい、毎日の手入れが面倒だからと敬遠していませんか。その原因はぬか床にあると思います。でも、古くから日本全国でさまざまなぬか漬けが生まれ、生活に根差してきたのは、発酵食品特有の力を持つからです。その力の秘密と、上手にぬか床を作り育てる方法を紹介しましょう。
発酵がぬか床美人をつくる
「毎日ぬか床をかき混ぜていたら、手にシミもできずツヤツヤしてきた」。そんな声をよく聞きます。決して気のせいではありません。ぬか漬けには他の発酵食品同様、たくさんの種類の酵素が含まれています。
酵素は、発酵食品に欠かせない酵母や細菌、カビなどの微生物が生み出すもので、生体内の化学反応を促進する仲介人。簡単に言えば、消化・吸収、代謝などに欠かせないものです。
その酵素の働きの一つが、シミやそばかすの原因となる活性酸素を抑える抗酸化作用。このため、アンチエイジング効果があります。加えて、酵素によって新陳代謝や老廃物の排せつが促進されます。
そんな酵素が、ぬか床をかき混ぜたりぬか漬けを食べたりすることによって体内に取り込まれるのですから、美肌を生むのは納得ですね。
栄養バランスに優れた発酵食品を生むぬか床
体にいいのは白米より玄米と言われます。それは、玄米には胚芽があるからです。
胚芽は、米が成長して芽になるところですから、成長に必要な栄養素をいっぱいため込んでいます。ところが、普通に精米すると、これが全部削り落されてしまうのです。栄養的にはもったいない話ですが、胚芽を含む削り落とされた部分がぬか床になるのですから、発酵食品であるぬか漬けは栄養たっぷりというわけです。
含まれている栄養素は、まずビタミン。野菜が持つビタミンを5~10倍にも増やしてくれます。中でもビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるため「疲労回復のビタミン」と呼ばれる一方、余った糖質が脂肪になるのを抑えます。
また、体内で作れないカリウムやマグネシウム、カルシウム、リンなどのミネラルも豊富なほか、タンパク質や脂肪も含みます。脂肪というと敬遠されるかもしれませんが、ご心配なく。ぬかに含まれるビタミンB2やナイアシンは脂肪を燃やしたり代謝を促したりして、脂肪を減らす働きをしてくれます。
江戸時代の食卓風景に「一汁一菜」という言葉が出てきます。味噌(みそ)汁とぬか漬けを指し、これでご飯を食べる。つまり、ぬか漬けはそれだけ豊富な栄養をバランスよく備えているのです。
熟成発酵で乳酸菌を生み出すぬか床
ぬか漬けをはじめ味噌や納豆などの日本伝統の発酵食品を作る微生物は、乳酸菌です。乳酸菌は、腸内に住む細菌のうち、体にいい働きをする善玉菌の代表格。腐敗物質などを作って体に悪さをする悪玉菌を抑え、腸の働きを促して便秘を予防し、肌荒れを防ぎ、免疫効果も高めてくれます。
腸は消化吸収に働く臓器というだけでなく、「第二の脳」と呼ばれるほど重要なものです。というのも、腸は独自に自律神経をコントロールする力があるのです。
自律神経のバランスが崩れると、頭痛や肩こり、情緒不安定といった自律神経失調症を起こすことがありますから、整腸作用を持つ乳酸菌は、日々の生活を快適にするうえでとても大事なものなのです。ぬか床の中では乳酸菌が億単位で増えていきます。
簡単に発酵食品を作り出すぬか床の上手な作り方
現代は核家族化が進み、昔のようにおばあちゃんから代々ぬか床を引き継ぐという慣習は期待できません。
といって、ぬか床づくりを諦める必要はありません。
用意するのは、基本的に米ぬかと塩と水だけ。うま味を出す昆布や煮干し、それに唐辛子があればなお十分でしょう。
- 米ぬかと水は同量、塩は米ぬかの10~15%。
- 味噌か耳たぶくらいの柔らかさを目安に混ぜます。
- それをタッパーやホーローのように口が広くて密閉できる器に詰めます。
- 昆布やイリコ、唐辛子はこの時に入れて軽く混ぜます。
これで土台作りは完了ですが、捨て漬けといって、くず野菜などを入れてぬか床を発酵させて微生物を育ててやらなければなりません。1週間から10日でぬか床の完成です。
注意しなければならないのは温度。乳酸菌が最も増殖する20~25度を維持することです。暑い時は冷蔵庫に入れておけば大丈夫。冷蔵庫に入れている間は、かき混ぜるのは3、4日に1回でいいですが、外に出している時は毎日かき混ぜる手間は惜しまないようにしましょう。
ぬか床には、乳酸菌のほか酵母や酪酸菌などがいて、これらのバランスを最適に保つためです。ぬか床にはいろんな野菜の成分が溶け込んでいますから、ぬか床を長く生かし続けるほど複雑でうま味の多いぬか漬けができるようになります。
自家製ぬか漬けづくりにチャレンジして、そのおいしさを味わうとともに、日本伝統の発酵食品がもたらす美肌・健康効果を実感してみませんか。