シンプル発酵の産物「ヨーグルト」
ヨーグルトは牛乳だけを原料としたシンプルな発酵食品です。発酵の主役となる微生物「乳酸菌」はありとあらゆるところに存在する細菌で、乳酸菌が牛乳に含まれるブドウ糖をエネルギー源に繁殖しながら乳酸などの酸をつくりだします。この乳酸が牛乳に含まれるタンパク質を固めたものが、ヨーグルトになります。
ヨーグルトの起源は6000~8000年前の中央ヨーロッパで、乳を入れていた容器にたまたま乳酸菌が入り込んで発酵したのがはじまりと言われています。牛乳に乳酸菌を加えるだけというシンプルな製法と、整腸作用などの健康効果への期待が相まって、世界中で広く食べられている発酵食品です。
ヨーグルトの乳酸菌は生きて腸まで届かない?!
「ヨーグルト=整腸効果」のイメージが招く誤解が「乳酸菌は生きて腸まで届き、直接腸内環境を改善する」というもの。
しかし残念ながら、体内に入った乳酸菌の多くは胃酸などで死んでしまいます。ただし死滅した菌も、腸内細菌の栄養となって整腸効果に一役かっているので、決してムダ死にではありません。
運よく腸までたどりついた乳酸菌は善玉菌の代表選手である「ビフィズス菌」を増やし、もともと腸内に常在する細菌に刺激を与えて腸内環境改善を助けます。
このように、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は直接腸で働くことはほとんどありませんが、ヨーグルトを日常的に食べ続けることで腸内の善玉菌を応援することができ、腸内改善のサポートにつながっていくというわけです。
骨粗しょう症の予防やリラックス効果も
ヨーグルトにはカルシウムも豊富に含まれているので、骨粗しょう症の予防にも効果的です。しかもヨーグルトは、乳酸菌の働きによって乳糖をグルコースとガラクトースに分解して消化しやすくしているので、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする乳糖不耐症の人でも難なく取り入れられるというメリットもあります。
また、腸内環境が良くなると、消化吸収、血液のめぐりや代謝などの身体全体が健康になって自律神経が整うという二次的な効果も期待できます。自律神経の、特にリラックス状態をつかさどる副交感神経が活性化するので、穏やかな精神状態を保ちやすくなるのです。
そのほかにも、免疫力アップ、血圧やコレステロール値の上昇抑制、疲労回復など、さまざまな効果が期待できるといわれているヨーグルト。毎日の食事に意識的に取り入れたい発酵食品のひとつです。
ポイントは複数のヨーグルト食べ比べ
ヨーグルトの乳酸菌は、自然界の乳酸菌が混在したものだけではなく、特定の機能が高いものを各メーカーで培養しています。自分の腸内細菌との相性や、新たな刺激を与える効果も期待できるので、定期的にヨーグルトの種類やメーカーを変えるのがおすすめです。
また、腸内環境改善を期待するなら、ヨーグルトと並行して食物繊維もたっぷりとるようにしましょう。腸内の善玉菌は、食物繊維を得て活動し、乳酸菌の応援を得て活性化します。ふだんの食事で食物繊維を意識して取り入れるようにすると良いでしょう。
調味料としても使える万能食材
調理不要なので、食事のサイドメニューとして、あるいは間食として。気軽に取り入れやすいところがヨーグルトの魅力です。そのままで、あるいはジャムやフレッシュフルーツと合わせてデザート風にすると、爽やかな風味と滑らかな舌触りを楽しめます。
そのほかにも、プレーンタイプのヨーグルトは調味料代わりに料理に使うのもおすすめです。サラダのドレッシングやソテーした肉や魚に添えるソースの材料として使うレシピも多く見られます。また、タンドリーチキンのように肉や魚をヨーグルトに漬けておくことで、肉質を柔らかくして程よい酸味を加えることもできます。
ヨーグルトの食べ方にマンネリを感じている方におすすめなのは、ドライフルーツのヨーグルト漬け。マンゴーやキウイなどのドライフルーツをヨーグルトに漬けて一晩冷蔵庫に入れておくだけで、乾いていた果肉が柔らかくなり、新たな食感を楽しめます。 ぜひお試しくださいね。
※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果効用を保証するものではありません。